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「記録」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「記録」

記録というものは、過去を調べ始めると途絶えるもの。
5月14日の前場10時45分から11時前にかけて過去の続落記録を調べていたら、株価は翌日の15日に、8日ぶりの反発。7連敗で下げ止まりました。
令和は6連敗からのスタートということです。
因みに・・・。
2016年3月29日→4月6日までが7連敗。
日経平均株価は、17,103円→15,715円。
2009年7月1日→13日までの9連敗。
日経平均株価は、9,958円→9,050円。
その先は2008年6月19日→7月7日までの12連敗。
日経平均株価は、14,348円→13,237円。
2016年の7連敗を止めた日は34円高。
2009年の9連敗を止めたのは211円高。
2008年の12連敗を止めたのは122円高。
2009年の時は、6月末の9,958円から7月13日の9,050円まで9日間で908円(9.2%)の下落。
7月13日の安値が底値となって切り返し、約3週間かけて1万円回復まで進んだのが歴史でした。
それにしても・・・。
不思議なことに記録というのは、過去を調べ始めると途絶えるもの。
連敗記録も続伸記録も、あるいは空売り連続記録なども、多くの記録は市場が気付いて調べ始めると止まることが多いもの。
おそらく、市場が気付くということは、それ自体が異常なこと。
異常なことは、異常なままでは終わらないというのが背景なのでしょう。

「遅れてきた若者たち」

バブルの後には暴落・恐慌があり、そして、またバブルになったのが歴史。
と考えると、実は、恐慌は願ってもない買い場の提供場面でしょう。
馬でも飼い葉を与えなければ走りません。
相場も、買い場がなければ、誰も見向きもしません。
リーマンショック後など、大きく下げた時には新規口座の開設やそれまで休んでいた投資家さんたちの復活が見始められました。
たぶん、理由はいつの時代にも「後れてきた若者たち」が存在しているからかも知れません。
世代差によって、市場やバブルに参加できなかった人たちが、ようやく出番がきたと考えるからなのでしょう。
「やっと参加できるようになりました」という声も聞こえることがあります。
先日、大阪でのセミナー終了後に私に近づいてこられた投資家さん。
「あんた、だいぶ前に○○のこと100円くらいのときに話していたやろ。
あそこで買って1,000円くらいで売ったんや。
買い増しもしたけどな」。
この時間軸は約8年。
それだけの時間軸を許容できるかどうかというのは、なかなか難しいことだと思います。
そして、続けて言われたのは「ああいう銘柄、今はないか」。
テンバガーを実現しても、人の欲望というのは限りがないようです。
というか・・・。
ヒントを自分で確かめて投資するという姿勢も大切なのでしょう。

一度暴落を経験しても、また投資を復活する人たちがいる一方で、二度と投資に参加しない人たちも多いもの。
だから「末代まで株に手を出してはいけない」というような家訓などが存在する。
この暴落・損失のDNAが消滅するまでの時間も必要ですし、このDNAが消滅するとバブルが頭をもたげてくるという可能性も高いでしょう。
恐慌とエルドラドは反復するというのが歴史。
40年以上も証券業界に身を置いてきたプロ中のプロの相場師さんは言う。
「暴落のときの対応としては、株価はボロボロになり、誰もが見向きをしなくなる。
これはどう考えても買い場に見える。
ただ、買えるかどうかは、そこからまた株価が半分になる覚悟が出来るかどうかだ」。
実は、この覚悟はなかなか出来ないもの。
出来ないからこそ、リターンになったときは大きいのです。
それでも、通常の投資法では、生半可な下落で覚悟してしまうことも多いもの。
対応としては、それこそ「誰もがダメだ」と言ったとき。
この機会はなかなかありません。
証券マスコミに籍を置いているので結構言いにくいですが、一番大切なことは「騒ぐな、急ぐな、慌てるな」ということ。
株が上がった、原油や金は歴史的上昇などという映像や活字に遭遇すると、どうも動き出す投資家さんが多いようです。
マスコミは「異常」なことしか報じないとすると、「株の大幅安」は異常事態。
「コモディティ急騰」も異常事態。
すべて活字やワイドショーは異常事態のオンパレード。
ここで踊ってはいけません。
誰も動かないときに動くリスク、誰も見向きをしないときに資金を投じるリスク。
これこそが本来的な意味でのリスク。
リスクなければリターンなしというのは当然ですが、リスクは理論的・学問的にはコントロールできるもの。
なかなか難しいですが・・・。

「ギア」

同じ株でも買う位置、売る位置で、その風景は変わるもの。
だから「あの上昇した株を買ったけど損をした」なんてことは容易に起こります。
「株は安く買って高く売る」と言うのはFPさんなんかの好む常套句。
頭の中では誰でも理解していること。
「株は安くなったら買う」。
そういう投資家さんも沢山おられます。
ただ、安く買ったあとのさらなる下落と、上昇までの時間の長さはなかなか我慢できないもの。
そして、急騰して話題になった銘柄の下落を狙って買うことが多いように思えます。
だから「安い」という下落幅は中途半端。
「確かに安いけど下落途中。ひと相場終わった後」みたいな格好です。
むしろ本音では「株は高くならないと買いたくない」。
あるいは「動いてなければ手を出したくない」なのかも知れません。

株価というものは、車のギアチェンジのように動くもの。
今の自動車は、ほとんどオートマですからあまり感じませんが、最初はロー。
アクセルを目一杯踏み込んでも、ほとんど加速はしません。
そこで、セカンドにギアチェンジして目一杯アクセルを踏めば、ようやく加速。
サードでさらに加速して、トップへ。
アクセルを大して踏まなくても、それなりのスピードで快適に走ります。
株価に置き換えてみれば、多くの人は、このトップスピードで走っている車に乗りたがるもの。
でも、トップですからスピードに限界があります。
いずれはサード、セカンドと、ギアダウンしてしまうもの。
出来れば止まっている車に乗りたいと脳の半分は理解しているものの、もう半分の脳は「トップギア好き」。
このアンバランスは、いつか解消されるのでしょう。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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