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「風物詩」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「風物詩」

兜町からいろいろなものがなくなっていきました。
最近話題になるのは「上場企業の決算発表風景」。
東証の記者クラブである「兜倶楽部」は、資料を配布する企業の担当者でごった返します。
でも、デジタル化などの影響で、この資料投函を廃止する動きが広がりつつあるといいます。
近い将来、決算発表の時期の風物詩とも言える記者会見や投函のオンパレードなる風景が見られなくなるのかもしれません。
往時は、東証で知り合いの企業の担当者に出会うと「櫻井さん、記者会見の出席者が足りないから来てください」なんて懇願されたものですが、今はありません。
逆に、知り合いの企業の担当者から「新人に取引所を案内してください」なんて依頼の方が多くなりました。
取引所の社員ではないのですが、これも兜町に長く棲息してきたからなのでしょうか。
先日、案内を頼まれた自動車部品メーカーの広報の新人二人。
事前に名前を聞いたら、一人はどう見てもフランス人の名前。
お会いしたら間違いなくフランス人。
でも、言葉は流暢な日本語。
これを国際化というのかどうかわかりませんが、いろいろな人が東証にやってくるようになりました。
それにしても「資料投函」。
記者クラブへ行って、何十個もあるマンションの郵便ポストみたいなところに投げ込むだけのこと。
記者の興味があれば連絡があるというような仕組みです。
みんなと同じように投げ込んでいると、なかなか気付いてくれません。
「だから、比較的すいている前引け後なんかが効率的。夕刊には間に合うし」なんて言っていたこともありましたが、今ではネットで開示すれば事済むこと。
さまざまなテクニックも役立たなくなってきました。

「11時と11時半」

「昭和の証券マンは11時になるとお腹が空く」。
嘘のような本当の話です。
先日、11時過ぎにエレベーターで一緒になった元証券マンの部長さん。
「お食事ですか?」との質問。
「今、前場は11時半までですよ」と言ったら・・・。
「そうでした、そうでした。最近は兜町でも11時半にならないとお店が開かないですもんね」。
この調子の良さは証券マン特有です。
1950年(昭和25年)の9月から2011年の11月18日まで前引けは11時。
同年11月21日から前引けが11時半になって、まだ約8年しか経っていません。
61年とわずか8年の時間差。
だから、11時に引けてランチというのは、昭和の証券マンはカラダに染み付いています。
しかも、かつて後場寄りは午後1時。
これも同じく1950年から1991年4月26日まで13時。
12時半になったのは、この1991年でした。
途中、ライブドア・ショックなどのときに一時的に13時になったこともありましたが、基本は12時30分。
いつの間にか、昼休みは2時間から1時間になってしまいました。
しかも、・・・。
昭和の時代は多くの会社で「食堂」というものがありました。
特に金融機関では、ランチは食堂。
当然ながら、今のような「ランチ難民」なんてある筈がありません。
もっとも、昭和の時代ですから、昼の時間も忙しくて食べられないこともありました。
そんな時は、食堂のおばさんが「置いておいたよ」とか「大変だね」なんて言葉。
好き嫌いが多いので卵や納豆だけなんてランチも多々ありました。
所属していた証券会社の株式部などがあった兜町のビルや丸の内の本社では大きな食堂。
その後、新川に移ったトレーディングルームでも食堂がありました。
ここで使われたのが「食券」。
人数が多くメニューも学食並みに多かったので、給料とともに食券が支給されていました。
食事まで上司と一緒というのも、あまり良くはないかも知れませんが、並んで待ってランチなんて概念がなかったころの話です。

「BGM」

ある水曜の後場。
東証Arrowsの実況で聞こえてきたのは「Another Sky」。
ANAの機内放送で流れるあの曲です。
どこかの決算説明会のBGMのリハーサルだったようです。
相場のさなかに音楽というのは、なかなか遭遇しない珍しいこと。
通常の遠征はJALを使うので、この曲を聞くのはANAの直行便で行く毎年の石垣島。
だから、どうしてもリゾートっぽいイメージが浮かび上がってきてしまいます。
欲望が交錯し、希望と絶望が同居する証券取引所で結構芸術性の高いバックミュージック。
アンバランスさは目立ちましたが、それでもなかなか良いものでした。
風景も記憶の一端だが、音楽も記憶の重要な部分を占めるもの。
トーマス・マンの「ブッデンブロークス」に見るように、実業も最後は芸術に昇華するもの。
そう考えると、値動きは乏しかったのですが感慨深い後場でした。
「この音楽を聴くと どこかへ行きたくなりますね」と投資家さん。
因みに、JALの場合、離陸前は「I Will Be There with You」。
着陸後は「明日の翼」。
こちらは出張モードしか浮かんできません。

「単純平均」

私は、「経済の実態は日経平均株価より、単純平均株価の方が良く表していると思います。
個人投資家の儲け度合いも、単純平均株価の連動に尽きると思います。
日経平均株価などに騙されてはいけません。
単純平均株価が2倍になれば・・・。
我々はかなりのお金を残せます」。
崇敬する先輩氏が5年前に書いていた言葉。
シンプル過ぎて目が届かないのが東証1部単純平均株価ですが、体感は日経平均株価よりも、TOPIXよりも単純平均というのが経験則。
そういえば・・・。
週刊誌も数十年の学習効果で賢くなってきたようです。
ある週刊経済誌の特集は「最新決算で選んだ!強い株」。
これはともかく「暴落時こそ絶好の買い場!!」の見出し。
少し相場観がマトモになってきたような気がします。
令和の時代は「週刊誌の強気は売り、弱気は買い」のアノマリーも変化するのかも知れません。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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