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普及促進が図られるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

HOUSE
(写真=PIXTA)

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスとは?

政府がZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及に力を入れ出しています。ZEHとは、建物の高断熱化と高性能設備の採用により、快適な室内環境と大幅な省エネルギーを実現させたうえで、太陽光発電等でエネルギーを創り、消費するエネルギー量を正味(ネット)でゼロにすることを目指した住宅です。政府は、2020年までにハウスメーカーや工務店等が建築する新築戸建て住宅の50%超をZEHにする目標を掲げています。

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出所:公表資料より作成

ZEH(ゼッチ)、政府が推進する理由は?

ZEHの普及促進が図られる背景には、2020年以降の地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が2016年11月4日に発効するなか、日本が目標に提げている30年度までに温室効果ガスを13年度比26%減らすという計画への取り組みを今後本格化させる必要があることがまずあげられます。第1次石油ショックがあった1973年度以降の国内のエネルギー消費の伸びをみると、全体が1.2倍なのに対し、家庭部門は2.0倍と大きく増加しています(2014年度時点)。目標の達成には住宅を中心とする家庭部門の省エネルギー化が不可欠といえます。

また、東日本大震災後の電力需給のひっ迫や国際情勢の変化によるエネルギー価格の不安定化等を受け、住宅のエネルギー自給(自立)の必要性が再認識されていることもあるでしょう。

快適さや健康へのやさしさもZEHに住まうメリット

ZEHがもたらす住まいの快適性、健康へのプラス効果も注目されています。電気代を節約しようとエアコンを切って暑さ、寒さに耐える倹約型生活と違い、ZEHは建物の断熱性能を高める等、少ないエネルギーで住宅全体を適度な温度に保とうとするものです。家中の温度差があまりないことでカビやダニの増殖が抑えられる効果が指摘されているほか、温度に急変による血圧の急激な上昇や降下で死亡するケースもある「ヒートショック」のリスク低減につながることも期待されています。

政府は補助金交付でZEHの導入を後押し

ZEHの普及政策では、2012年度から導入費用に対して補助金を交付する支援事業が行われています。16年度の補助金額は、1戸当たり一律125万円で、さらに太陽光等の再生可能エネルギーで発電した電気をためる蓄電システムを導入した場合、蓄電容量1キロワット時当たり5万円(ただし、かかった費用の1/3または50万円のいずれか低い金額が上限)の加算となっています。ZEHは性能に優れた断熱部材や設備機器を用いることから、建築費用が一般住宅と比べて割高となってしまうのが難点です。そのため、所定の条件を満たす住宅に補助金を支給し、追加費用の一部を賄えるようにすることで、ZEHの普及促進が目指されているのです。補助金の交付決定数は12年度に443件だったものが、15年度には6,146件と約14倍に増えています。

ハウスメーカー等にZEHの普及目標の設定も求める

2016年度からは、自社が受注する住宅のうちZEHが占める割合を20年度までに50%以上とする目標を宣言・公表したハウスメーカーや工務店等を「ZEHビルダー」として登録する制度が開始され、同ビルダーが手掛けるZEH物件のみが補助金の対象となりました。すでに、ZEHビルダーとして3,500社超の企業が登録済みで、今後は先行する大手ハウスメーカーに加えて、中小・地場の工務店等もZEHの建築ノウハウ確立や技術者育成といった取り組みを強めることが予想されます。こうした動きは、設計・施工業務の生産性向上、設備機器等の量産化を通じて、ZEHの低コスト化につながると期待されます。

ZEHの関連企業は?

主なZEH関連企業としては、大手ハウスメーカーや住宅設備・建材メーカーが挙げられます。また、エネルギー収支ゼロ化を支援する太陽光発電、蓄電池、家庭用燃料電池、発光ダイオード(LED)照明等の需要拡大ほか、ZEHが増えれば住宅内のエネルギー消費量が一目でみられたり、各機器を自動制御したりするHEMS(ヘムス=ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)も普及していく可能性があります。それら環境製品・システムを手掛ける電機メーカー等も注目されるでしょう。

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