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【第2回】和泉昭子氏が教える、「子のため・孫のためにしっかりお金を残す方法」

izumi
生活経済ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナーの和泉 昭子氏

マイナス金利に突入した現在、大切なお金を守り、増やしていくために資産運用を考えている方は多いのではないでしょうか。
お金のキャンパスでは、生活経済ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナーの和泉 昭子氏による連載を通じて、かしこく資産運用するためのノウハウをお届けします。

第2回目は、これからお金が必要になる子どもや孫に資産を渡したい・相続税がなるべく負担にならないようにしたいという方におすすめの資産継承術を教えていただきました。

より多くお金を残すには“工夫して贈与すること”が必要

人口減少・少子高齢化が進む日本社会では、中長期的に若い世代の家計は厳しくなると予測されるので、資産の贈与はご家族みんなが幸せになる一助になるはずです。

国の政策としても最近、高齢者世代から若い世代へ早い段階で資産を移転することを後押しする仕組みが増えています。相続税が引き上げられる一方で、贈与税に関する特典は増えていますので、相続対策を始めるのに非常によいタイミングだと思います。うまく利用することで相続税の負担を大きく軽減することができる3つの贈与方法を解説します。

1. 教育のためのお金の贈与は、最大1,500万円の贈与税が非課税

まずは、2013年にスタートした「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」があります。これは、2019年3月31日までに教育資金の目的で30歳未満の孫等に対して一括贈与した場合、最大1,500万円までの贈与税を非課税にするというものです。

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※1 金融機関とは、信託会社(信託銀行を含む。)、銀行等および金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限られます。)をいいます。(実際に商品を提供するか否かは、個々の金融機関の判断によります) 
※2 学校以外の者に支払われるものについては、500万円を限度とします。 
※3 支払金額が少額の場合には、領収書等の提出に代えて、支払金額や支払先等をまとめて記載した明細書を提出することができます。(2015年1月1日以降に支払っている費用で、2016年1月1日以降に金融機関に提出する書類について適用されます)

2. 結婚・子育てのためのお金の贈与は、最大1,000万円までが非課税

また、2015年には「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」が創設され、2019年3月31日までに20歳以上50歳未満の子や孫へ結婚・子育て資金を贈与した場合、1,000万円までが非課税になりました。

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※4 結婚関係に支払われるものについては、300万円が限度です。 

ただし、①の教育資金の贈与と②の結婚・子育て資金の贈与の非課税制度を利用するためには、信託銀行などの金融機関に専用の口座を開いて資金を管理し、使途確認のために領収書を提出するなどの手続きが必要です。

3. 年間110万円の基礎控除額を利用できる「暦年贈与」+「ジュニアNISA」の非課税枠を利用

3つめとして、今年から「ジュニアNISA」が創設されました。「ジュニアNISA」は「NISA(少額投資非課税制度)」の子ども版です。20歳未満の子どもの名義で口座を開き、年間80万円までの投資額による利益が最長5年間非課税になります。年110万円までの基礎控除額を利用できる従来の「暦年贈与」の枠を使って贈与を行い、お子さんやお孫さんの「ジュニアNISA」の口座内で投資を行うのもよいのではないでしょうか。
 
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災害等の特別な場合を除いて18歳まで引き出しができないという点には注意が必要ですが、一定期間出し入れが不自由であることはメリットともいえます。すぐに引き出せる預貯金とは違い、大学等の教育資金として、資産を確保できるからです。

子どもや孫が成長したときに渡せる、お金と知識のおくりもの

「ジュニアNISA」は原則的に親が管理しますが、15歳になると口座の取引残高報告書が本人にも送られてきます。マーケットの状況に応じて投資商品を変えることもできますので、1年に1度程度、たとえばお誕生日や進級などの節目や、政権交代、経済が大きく動いたときなどに、運用方法についてお子さんやお孫さんと一緒に話し合ってみるのも楽しいでしょう。

それは金融リテラシーを身につけることになり、ひいては投資する力を育むことにもつながります。ご相談者が投資の経験がおありでしたら、お子さんやお孫さんに教えてあげるのもいいですね。

教育資金という性質上、一般的にリスクが分散されるバランス型の投資信託を利用するのがよいといわれますが、ほかに子ども保険などに加入していて教育資金が十分に確保できている場合などには、もう少しリスクをとって、高いリターンが期待できる商品を選ぶこともできます。「ジュニアNISA」は教育資金贈与とは異なり、教育資金に使わなければならないというわけではありません。20歳になれば自動的に「NISA」に移行されるので、社会人となったお孫さんの人生を支える「玉手箱」にもなるかもしれませんね。

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