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次世代の蓄電池として注目される全固体電池

(写真=Smile Fight/Shutterstock.com)

液体を使わず安全性が高い次世代の蓄電池、高性能化へ研究開発が進む

現行のリチウムイオン電池よりも安全で高性能な次世代の蓄電池として「全固体電池」が注目されています。全固体電池は、その名が示すとおりすべてが固体でできている電池のことをいいます。

リチウムイオン電池は、正極と負極の間にある液体の電解質(電解液)にイオンを流して放電や充電を行うしくみですが、電解液は可燃性の物質を含んでいるため、液漏れや発熱などにともない発火するおそれがあります。一方、全固体電池は放充電の際にイオンの通り道となる電解質に、液体ではなく固体材料(固体電解質)が使われます。それによる利点としては、液漏れの心配がないうえ、一般に電解質に燃えにくい材料が用いられることで安全性が高いとされています。また、電解液を正極側と負極側に隔てて接触を防ぐセパレータも不要で構造をシンプルにできるほか、リチウムイオン電池が高温や低温で出力が低下するのに対して、全固体電池は幅広い温度域で性能が安定することも特長として挙げられます。

 

 

そのほか、リチウムイオン電池より長寿命化できたり、レアメタル使用といった資源制約の問題を軽減できる可能性があること等も、全固体電池の優位点とみられています。

また、全固体電池は出力や蓄電量といった電池の基本性能がリチウムイオン電池を下回るという課題が指摘されてきました。しかし、最近ではこうした問題の解決に向けた研究開発も進んでいます。例えば、東京工業大学や大手国内自動車メーカーらの研究グループは昨年、出力や蓄電量が既存のリチウムイオン電池の倍以上あり、数分でフル充電できる全固体電池を開発したことを明らかにしています。

電気自動車の航続距離を大幅に延ばし、充電も速まると期待されている

全固体電池が実用化された際に、主な用途先になるとみられるのが自動車分野です。世界では、ドイツや英国、フランス、インドが化石燃料で走る自動車の販売を2030年あるいは40年までに全面禁止する方針を打ち出すなど、環境にやさしい電気自動車(EV)の普及を加速させる機運が高まっています。

一方、主にリチウムイオン電池が使われている現行のEVは、航続距離が300~400㎞程度とガソリン車に比べて短いうえ、充電に時間がかかりすぎることが弱点となっています。高い安全性や高出力・大容量、高速充電等のメリットを備えた全固体電池が将来的に使われるようになれば、EVのさらなる普及促進につながる可能性があるでしょう。今年10月には、国内の大手自動車メーカーがEVなど向けに全固体電池を2020年代前半に実用化する方針を表明しました。

また、自動車以外の全固体電池の用途として、例えばスマートフォンなどのモバイル端末のほか、太陽光や風力発電といった自然エネルギーの電力を大量に貯蔵するシステムへの活用が期待されます。

全固体電池の研究開発では日本企業が先行しているともいわれます。特許庁が2014年2月に公表した調査によると、02~11年の全固体電池に関する特許出願件数は日本が出願人国籍別で約60%と大半を占めていました。ただ、同電池が使用されると期待される市場の大きさや潜在能力の高さから、足元では海外企業も開発を活発化させているとみられます。

全固体電池の将来性が折に触れ注目されそう

全固体電池の実用化には依然多くの技術的課題があるとされ、実際に蓄電デバイスとして使われるのはまだまだ先とみられています。ただ、同電池は社会構造を変革させる可能性を持つ革新電池として期待が高く、株式市場でも全固体電池が投資テーマとして折に触れ注目されていくことが想定されます。

 

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