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禁止から解禁へ 副業起業の時代がやってきた(後編)

会社員を続けながら、自分の特技や知識を生かしてビジネスを立ち上げる――そのような副業起業を選ぶ人が増大中。政府が「働き方改革」を推進するなか、パラレルワーク(副業・兼業)として新しいビジネスをはじめようとするうねりが起きています。この副業解禁を機に、副業を活用した起業を後押しするのが中野裕哲さん。起業コンサルタントの視点から、“副業起業”のメリットや注意すべき点について話していただきます。
 
 

 「専業起業」より、「副業起業→専業移行」のほうが業績好調

 
会社を辞めて独立し、専業起業に踏み切ることは、リスクをともなうだけに誰でも不安に思うもの。そのようななか、昨今の副業解禁への大きなうねりを受けて、会社を辞めずに副業で起業するという、リスクを最小限に抑えた選択肢が現実的なものになってきました。「『働き方改革』を推し進める政府の後押しもあって、政府や自治体の助成金や低金利融資等が充実している今は、新しいビジネスへ挑戦するベストタイミング。私のところにも、副業起業の相談を持ち込むケースが増えています」と話すのは、起業コンサルタントの中野裕哲さん。
 
前編では、副業解禁の背景に、人手不足の問題があるという企業側の事情を明らかにしました。では、起業家にとって、副業解禁はどんな意味を持つのでしょうか。「一番のメリットは、リスクを抑えて、安定した収入を得ながら起業できること。うまくいかなかった場合、投下した資金は失いますが、普通に元の生活に戻れるわけで、この安心感は大きいでしょう。また、会社をやめて専業起業する前に、試しに副業としてやってみて、そのビジネスが成功しそうかどうかを見極めることもできます」と中野さんは説明します。
 
下のグラフは、起業した人の起業パターンの構成比をあらわしたもの。起業した人のうち、副業起業した人の割合は27.5%。このうち約半数が、副業として起業し、途中で会社をやめ「専業移行」しています。「パラレルワークとして、二つの仕事をずっと続けるも良し、どこかのタイミングで専業への移行を目指すも良し。それはその人の考え方次第です。ただ、副業起業当初は独立をまったく考えていなくても、副業が順調に伸びた場合、会社を辞めて事業に専念する道を選ぶ人が多いです」
 
図 起業パターンの構成比
 
注:起業家のうち、起業直前に勤務者であった者について集計したものである。
出典:日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」2016年
 
下記二つのグラフは、起業パターン別に「事業の業績」と「収入への満足度」を比較したもの。途中で副業から「専業移行」した人は、最初から「専業起業」した人よりも、総じて業績が好調で、収入への満足度も高いことがわかります。「副業起業から専業移行までの『助走期間』に、仕事のスキルをアップさせ、経営感覚を磨くことができます。また、集客しておくこともできるため、本格起業直後から、ある程度の売り上げも見込めます。いきなり起業するよりも、成功する可能性が高くなるのは当然といえるでしょう」
 
図 事業は軌道に乗っているか(起業パターン別)
 
注:起業家のうち、起業直前に勤務者であった者について集計したものである。
出典:日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」2016年
 
図 収入に対する満足度(起業パターン別)
 
注:起業家のうち、起業直前に勤務者であった者について集計したものである。
出典:日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」2016年
 

中途半端なビジネスになる危険性も

 
副業起業のメリットとして、中野さんが続けて指摘したのは、「自分のやりたいことをやって、副収入を得る」ことの精神的な充足感。「自分のやりたいことであれば、例え大きく稼げなくても、多少収入が不安定であっても、やりたいことができているだけで満足感を得ることができます。生活を支えなくてはならない独立起業であったらこうはいきません」
 
では、副業起業のデメリットはどんなところにあるのでしょうか。「会社員としての仕事があるため、むやみに自分の時間や労力を副業に回すことができず、中途半端なビジネス展開になってしまう可能性があります」と中野さん。だからといって、副業にエネルギーを注ぎ込めば、プライベートの時間がなくなったり、体力的にきつくなったりということにもなりかねません。
 
にわかにクローズアップされてきた「副業起業」という選択肢。大切なことは、「本業とのバランスをいかにとるか」ということのようです。
 
 
中野裕哲(なかの・ひろあき)
起業コンサルタント®、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー(CFP®、一級ファイナンシャルプランニング技能士)、宅地建物取引主任者。起業コンサルV-Spiritsグループ代表。
起業家支援をライフワークとし、「まるごと起業支援ドットコム」を主催。年間約300件の起業相談を無料で受け、多くの起業家を世に送り出している。日本最大級の起業支援ポータルサイト経済産業省後援DREAM GATEにて7年連続相談件数日本一。起業の最前線、現場での支援経験に基づく独自の起業・独立ノウハウに定評がある。http://v-spirits.com/
 
日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
ライター 平林理恵
日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。
 

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