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人生100年時代に、長期的な資産形成は投資を味方に (後編)

(写真=iStock by Getty Images)

投資は人生100年時代のマネープランにマストな手段。前編では、ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんに、マネープランに投資を組み込むことの必要性と、安定的な資産形成が期待できる「長期・積立・分散」投資についてお聞きしました。後編では、さらにオススメな税制優遇のある制度などについてお聞きします。

【前編】「人生100年時代に、長期的な資産形成は投資を味方に」はこちら

「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の利用は慎重に

投信積立をはじめるなら、運用益が非課税になるなど税制優遇のある制度を活用するのがお薦めだと深野さんはアドバイスします。今は「NISA(少額投資非課税制度)」「つみたてNISA」「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」「iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)」という4つの選択肢があります。

それぞれの制度の概要をまとめたのが下の図表です。

図表3 税制優遇を受けながら投信積立ができる制度

  NISA つみたてNISA ジュニアNISA iDeCo
利用できる人(居住者) 20歳以上 20歳以上 未成年者(0~19歳)
(親権者が口座を管理)

20歳以上60歳未満
(給与所得者は20歳未満も可)

税制優遇の内容 運用益(※1)が非課税
(最長5年間)
運用益(※1)が非課税
(最長20年間)
運用益(※1)が非課税
(最長5年間)
・拠出時/掛金(積立額)が全額所得控除
(所得税や住民税が安くなる)
・運用中全期間/運用益(※2)が非課税
・受取時/一時金は退職所得控除の対象
年金は公的年金等控除の対象
利用枠 年120万円 年40万円 年80万円 属性により年間の上限額が異なる
対象商品 上場株式、投資信託等 一定の要件を満たした投資信託 上場株式、投資信託等 投資信託、定期預金、利率保証契約型保険
引き出しの制限 なし なし 18歳まで原則不可 60歳まで原則不可

※1 株式の配当や売却益、投資信託の分配金や売却益(譲渡益)等
※2 投資信託の分配金や売却益、定期預金の利息等

税制優遇面ではiDeCoが最も有利です。「確かに所得税の減税効果がある所得控除などは魅力ですが、30代でiDeCoを利用するには慎重な判断が必要です」。iDeCoは老後資金をつくるための制度であり、原則60歳まで引き出しができません。その前にお金が必要なことがあっても解約できないため、例えば、iDeCoの口座にまとまったお金があるのに借り入れをしなければならないという事態も考えられます。

「30代からiDeCoを利用してもいいのは、60歳までのライフイベントの資金計画ができていて、さらにiDeCoでの積み立てができるだけの余裕がある人(家庭)に限られます。それ以外の場合は、40代以降になってから検討するのが無難でしょう」

まずは「つみたてNISA」か「NISA」がお薦め

ではお薦めはどれでしょうか。「それは、使途の制限がない、つみたてNISAかNISAです(※3)。長期投資が基本ではありますが、この2つのいずれかを選んでおけば、お金が必要になったときにいつでも解約することも可能なので、これからさまざまな資金需要がある30代が、投資のはじめの一歩を踏み出すのに向きます」。

※3 つみたてNISAとNISAの併用は不可。

特に、つみたてNISAは、その名が示すとおり投信積立に特化した制度。商品ラインナップは長期・分散投資に向く投信に絞り込まれており、初心者でも選びやすくなっています。1本で日本を含めた(あるいは日本を除く)先進国、新興国の株式に分散投資できる商品もあります。

「最初は、そうした幅広く分散する商品から試すのが一つです。1本で世界の成長をとっていくというイメージです。こうしたグローバル分散投資が月1,000円の少額からできるので、家計にとって無理がなく、値動きしても慌てることはないだろうと思える金額から始めてみましょう」。つみたてNISAに希望する商品が見当たらない場合には、NISAを選ぶといいでしょう。

投資とは一生涯のおつきあい

ただし、投資を始めるのは一定の貯蓄ができてからと深野さん。「物事には順序があります。お金とのつきあい方でいうと第1ステップは積立貯蓄。そこである程度貯まったら、第2ステップの投資に進みます。目安として積立貯蓄で100万円貯まったら、投資をスタートしてもいいでしょう。長期的に運用できる余裕資金を充ててください」。

前編でも触れたとおり、投信積立はタイミングを選ばずいつでも始められます。「投資は『習うより慣れろ』。勉強してから始めようという考え方は間違ってはいないのですが、完璧な知識を付けてからと思うと、いつまでたっても始められません。勉強は投資に関する本を1冊ぐらい読めば十分。値動きのリスクの感覚などは、自分のお金で実際に投資をして、はじめてわかること。繰り返しになりますが、まずは少額から試してみることです」。

ときには株価が暴落することもあるでしょう。「それでも過去を振り返ってみれば、暴落してもいずれ回復します」。ですから損をしているときの売却は禁物。そのためにも投資は余裕資金でやることが大事です。「仮に失敗したとしても、30~40代にはリカバリーできる時間がたっぷりあります」。

人生100年時代は、お金を長持ちさせなければなりません。「そのためにも、投資は一生つきあっていくもの。これまでは高齢になったら投資はやめるというのが常識でしたが、これからは生涯現役。70歳を超えても続ける必要があるかもしれません。30代、40代のうちから取り組み、投信積立をきっかけに自分なりのやり方を見つけられるようになれば、生涯で大きな差がつくでしょう」。

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日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
ライター 萬 真知子

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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