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【第6回】和泉昭子氏が教える、「老後を迎えるまでに今から準備するお金の話」


生活経済ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナーの和泉 昭子氏

マイナス金利に突入した現在、大切なお金を守り、増やしていくために資産運用を考えている方は多いのではないでしょうか。お金のキャンパスでは、生活経済ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナーの和泉 昭子氏による連載を通じて、かしこく資産運用するためのノウハウをお届けします。

第6回目は、将来年金がどれくらいもらえるかわからないし、漠然した不安のある「老後のためのお金」について、今からできることを和泉先生に教えてもらいます。

老後は“約25年”。いくら必要か

まずは、「漠然とした不安」を「具体的な課題」に変えることが大切です。不安が課題に変われば、解決策を見いだすことができるからです。

さっそく、自分には老後資金がどれぐらい必要なのか計算することから始めましょう。老後資金は、どんな生活を送りたいかによって大きく変わってきます。最低限の支出に加え、老後を豊かに暮らしたい、旅行をしたい、趣味を満喫したいといったことがあれば、それらも全部見積もってください。加えて、医療や介護などいざというときの備えのお金として500万~600万円は用意しておきたいところです。

厚生労働省の簡易生命表(平成27年)によると、65歳からの平均余命は男性が19.46歳、女性は24.31歳となっています。これをもとに、65歳から90歳くらいまでの間に、前述した支出の合計がいくらになるかを試算してみましょう。一方で、入ってくるお金も計算しましょう。老後の収入の柱である公的年金については、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で具体的な数字が把握できます。

ただし、50歳以上の場合は、現在の年収が60歳まで続くものとして試算されています。一般的に、50代で収入が下がる傾向がありますので、特に50代前半では記載されている見込額よりも少なめに見積もっておいたほうが無難でしょう。これに退職金や企業年金などを加え、65歳から90歳までの収入の合計を計算します。

一般的な老後資金の目安は“2,000万円~3,000万円”。どう捻出する?

老後の収入合計から支出合計を引くと、一般的には2,000万円~3,000万円ほど足りないといわれています。よく「老後資金は3,000万円」といわれるゆえんです。一方で「老後資金は1億円」という言葉も耳にしますが、これは入ってくる金額を考慮していないか、かなり贅沢な老後を過ごすために必要な金額といえるでしょう。

さて、次は足りない分をどうするかです。たとえば2,000万~3,000万円不足するとして、これから10年ほどでそれを準備するのは容易なことではありません。特にお子さんが独立前で、教育費の支出が続いているとすればなおさらです。

「お金に働いてもらう」という選択肢

そうなると、「お金に働いてもらう」運用の力を借りることになりますが、現役で収入があるうちは実感がわかないかもしれませんね。

多くの方は退職金が入ったタイミングで運用を始めようと考える方も多いのですが、実はこれが危険なのです。60歳で運転免許を取得し、いきなり高速道路を猛スピードで運転したら危ないでしょう。運用も同じように、小さい金額で慣らし運転をしておくことが大切です。

今から退職までは、投資商品を自分で選び、投資の感覚に慣れる準備期間と考えましょう。教育資金や住宅ローンが厳しい間は少額で運用し、それが終わったら少し投資額を増やすなどして運用スキルと精神的なトレーニングをしていきましょう。

投資初心者は何から始めたらいい?

初心者はすべてお任せのバランス型の投資信託から始めるのがハードルが低いですが、運用に慣れるという意味ではバランス型だけではなく、投資対象となる資産やエリアを自分で決めることもいいと思います。

日本株や外国株に投資するインデックスファンドまたはアクティブファンドはいかがでしょう。インデックスファンドは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など目安となる指数に連動した運用スタイル。一方、アクティブファンドは、指数を上回る成績を目指す運用スタイルです。培ってこられたビジネスのセンスを活かして有望と思われるエリアに分散投資してみるのも面白いのではないでしょうか。

退職金の投資は慎重に

最後に大切なのは、退職金が入ったときに一度にまとめて投資しないことです。リーマンショックの前年に退職した方が退職金をまとめて投資し、翌年、株が大暴落するということがありました。投資に慣れていれば「このまま持ち続けていれば株価はいずれ戻る」という判断もできたかもしれません。でも居ても立ってもいられず、一番下がっているときに狼狽売りしてしまったケースも多くありました。一方で、翌年に退職した方は底値で投資することができ、大きな利益をあげています。しかし、いつが最も良いタイミングなのかは、後からしかわかりません。たった1年の違いで明暗を分けてしまうこともあるので、投資は何度かに分けて行うことをおすすめします。

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