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北朝鮮リスクによる円高圧力について

(写真=gerasimov_foto_174/Shutterstock.com)

北朝鮮がミサイルや核実験を繰り返すたび、為替市場では円高に振れる場面がみられています。目先も9月9日の北朝鮮建国記念日や10月10日の北朝鮮労働党創建記念日を控えて、円の押し上げ要因となることが警戒されています。

リスク回避=円高のなぜ

為替市場ではリスク回避圧力が強まるとイコール円高の動きが定番となっています。背景としていくつかの要因が指摘されますが、たとえば対外純資産残高の多さが挙げられます。日本は世界一対外純資産を持っている「お金持ち」国であり、これが安心感につながって円買いになる、もしくはリスクが高まる場面で日本人が海外に持っている対外純資産を引きあげることで円買いになる、との考え方です。また、日本は世界有数の低金利を採用していることから、円で資金を調達し海外で運用する円キャリートレードがあり、リスクが高まる場面ではこの手仕舞いによって円に資金が逆流し円高を引き起こす、との考え方もできるでしょう。為替市場では、ドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨が流動性や国の信用の面からも世界中で決済に多く使用されていますが、過去、2007年のサブプライム危機や2008年のリーマンショックによる米国経済の大幅な悪化、続く2009年から2011年頃の欧州債務危機による英国を含めた欧州経済の悪化やユーロ崩壊の危機を受けて、この4通貨のなかで円が消去法的に買われた経緯もあり、為替市場ではリスクオフ=円買いとの反応が反射的にみられるようになっているのです。

北朝鮮リスクの円買いは今後も続く?

北朝鮮リスクを巡る円高圧力は今後も続くのでしょうか。基本的には懐疑的です。北朝鮮リスクの先行きに関しては、緊張緩和、緊張継続、緊張先鋭化のシナリオが考えられますが、緊張緩和に向かえば当然、リスク回避の円高圧力は後退するでしょう。さらに、緊張先鋭化の場合ですが、北朝鮮が核やミサイルの実験を繰り返し、韓国が米国と空母や戦略爆撃機の配備について協議を行っている今以上に先鋭化するとすれば、もはや実際の攻撃開始や軍事衝突が目前の状況になっていると思われます。こうなった場合、日本が巻き込まれることはほぼ確実と思われ、戦争の当事者としての日本、という構図になります。その場合、プログラム売買や市場の反射的なトレードなどにより、一瞬円が買われることはあっても、長続きせずに急激に値を下げる展開が想定されます。東日本大震災のような一時的な災害ではなく、戦争が泥沼化する可能性もあるなかで、日本人による対外純資産の引き上げも限定的になるでしょう。スイスフランなど、他の選択肢もあるなかで戦争当事者の円がリスクの回避先で居続けられるとは思えません。

問題は緊張継続のシナリオです。この場合が最も「リスク回避の円買い」が入りやすい状況とみられます。ただ、①北朝鮮のミサイルや核に関する技術が明らかに進歩を続けているなかで、緊張継続は日本に対する核を含む攻撃が現実化する可能性がより高まっていくことでもあり、「円買い材料」であり続けるかには疑問の余地があること、②緊張が継続するだけでは、景気や経済などファンダメンタルズへの影響は限定的にとどまり、結果、中長期的に為替レートを動かすには力不足と考えられること、また③緊張継続だけでは本格的な資金の日本回帰といったフローにつながるとも思えないこと、などから、あくまで投機筋や短期筋による一時的な円高局面は演出できても長続きはせず、また、市場の「慣れ」も加われば、これを材料視した円高圧力は徐々に限定的になっていくのではないでしょうか。

実際、今年に入って北朝鮮は14回ものミサイル実験を行っていますが、これをドル円チャートにプロットしてみると上昇局面でも下落局面でも実験は行われており、方向性を決定づけたとは言えない状況です。下図、3月から4月の下落局面ではフランス大統領選挙など欧州の政治リスクが、5月から6月の下落局面ではトランプ大統領に絡むロシア疑惑の台頭なども絡んでいます。

目先、9月9日に北朝鮮の建国記念日を控えるなかで、北朝鮮がICBM発射準備との報道もあり、これ絡むリスクオフがドル円の上値を重くする場面もあるでしょう。しかし、その後は米議会における2018年度予算や債務上限問題、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのバランスシート縮小着手の有無や12月の利上げの有無等、年末にかけて米国サイドの注目材料もたくさんあります。基本的には核戦争には突入しない、とのシナリオのなかで今後は北朝鮮、米国とも落としどころを模索し始めると考えられ、北朝鮮を巡る円高圧力は徐々に限定的になっていくと考えられます。チャート的には今年4月の安値である1ドル=108円台前半がサポートされるかに注目しています。

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