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FX投資の基礎知識②・・株式投資との違い(後編)

Economy
(写真=CA-SSIS/Shutterstock.com)

<前編はこちら>

「実需勢」の存在

株式市場や為替市場にはさまざまな立場の人々が参加し売買を行いますが、その参加者には違いがあります。特に大きな違いの1つが、為替市場には「実需勢」という参加者がいることです。実需勢とは一般的に輸出や輸入などの貿易にともなう為替の売買を行う参加者のこと。例えば日本でガソリンスタンドを運営している石油会社の場合、原油を輸入する必要があります。原油は世界の商品市場でドル建てで取引されていますから、日本の石油会社は手持ちの円をドルに換え(円売りドル買い)、ドルを支払って原油を買いつけることになります。このように輸入を行う企業を輸入企業、逆に輸出を行う企業を輸出企業などと呼びます。輸出企業の代表的なものとしては製造業が挙げられます。車や家電などを含め何らかの製品を製造し、海外(たとえば米国)に輸出するとその代金として外貨(ドル)が入ってきます。製造業はそのドルを日本国内での経済活動のため円に換えますので、ドル売り円買いが行われます。

「実需勢」が為替市場の値動きをより複雑なものに

この実需勢の存在は為替市場の値動きをより複雑なものにしています。なぜならば実需勢は相場の水準感や材料を無視した売買をすることがあるからです。上記の例で考えてみましょう。ガソリンスタンドを運営している石油会社は原油を輸入しなければ仕事になりません。そのためには円売りドル買いが必要なのです。たとえ投資家にとって「ドルは割高だ」と思える水準であっても、「これはドル売り材料だ」という材料が出た場面であっても、石油会社は安定的なエネルギー供給という社会的使命のためにも淡々と円売りドル買いを行います。自動車会社にしても同様です。彼らの使命は、よりすばらしい車を作って世界中の人に乗ってもらい、それによって会社の利益を出すことです。為替市場で儲けることは二の次、三の次なのです。したがって投資家がドル売りをためらうような場面でも淡々とドル売り円買いを投入してきます。

利益は二の次!?

株式市場(債券市場も)の参加者には、「利益は二の次」という参加者は基本的に存在しません。基本的に資金の運用を目的に市場に参加していますから、利益を出すことが参加者の共通の目的であり、そのために合理的な行動を行います。ところが為替市場には上記の通り利益は二の次という実需勢が参加していることで、必ずしも為替の売買による利益を最大化しようという行動ばかりではありません。ゲームのルールが株式市場や債券市場と為替市場では根本的に違うのです。

国や中央銀行の存在も

実需勢のように為替の売買による利益を度外視する参加者は他にも存在します。例えば国や中央銀行です(介入の決定権は国によってさまざま。日本は国(財務省)が実施を決定しますが、スイスなどは中央銀行が実施を決定します)。通貨の上昇や下落が大きくなりすぎると物価や貿易活動など国の景気や経済に悪影響を及ぼすことから、国や中央銀行はこれを防ぐために為替介入を実施することがあります。もちろん彼らも為替の売買によって利益を出そうとしているわけではありません。

このように利益の最大化を至上命題としている参加者で占められている株式市場とそうではない為替市場では参加者の行動原理がそもそも違っており、値動きもまた違ってくることは覚えておく必要があるでしょう。     

 

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