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妊娠から出産、どれだけかかる? 事前に知っておきたいお金の話(後編)

(写真=Thinkstock/Getty Images)

ファイナンシャル・プランナーで、マネーとキャリアの専門家集団であるプラチナ・コンシェルジュの國場弥生さんが妊娠出産にまつわるお金の情報をお届けします。出産はうれしいイベントですが、一方で大きな支出をともないます。また、もらえるお金や戻ってくるお金もあるのでトータルに把握することが大切です。生まれてきた子どものための資産運用も検討しましょう。

100万円超も! バースプランによって出産費用はさまざま

近ごろ耳にする機会の増えた「バースプラン」は、病院で産むか助産院で産むか、里帰りするか、無痛(和痛)分娩か普通分娩か、夫の立ち会いを希望するか等、大小たくさんの選択肢からつくる自分にあわせた出産計画です。出産は貴重な経験ですから、細部までこだわりたいという声も少なくありません。ただし、医師と相談して安全を確保するのが大前提ですし、選択肢によっては費用が高額になる可能性もあるので、プランをつくりながら体調や予算にあわせて調整することをお勧めします。無痛分娩を選ぶ場合は、対応してくれる病院の数が多くはないので早めに分娩予約を入れた方がよいでしょう。費用は通常の分娩プラス10万円から20万円程度が目安です。

出産費用には地域差もあります。全国平均は約49万円ですが、都道府県別では鳥取県がもっとも低く(平均約39万円)、東京都がもっとも高く(平均約59万円)なっています。ちなみに東京都の中で最も高い出産費用は約256万円というデータもあります。

しっかりもらう、取り戻す! 出産でもらえるお金、戻ってくるお金

妊娠出産期間は1年程度の間に出費が重なるので、家計への負担は少なくありません。最近は夫婦共働きで収入を得ていることも多く、妻の収入が減るうえに支出が増えてしまうのは家計の一大事。ですから「出産育児一時金」等のもらえるお金、「医療費控除」等の取り戻すお金について知っておくと安心です。

下の図からも、子育て期は経済的なサポートが用意されていて社会全体に支えられていることがわかります。子どもを産みやすく育てやすい環境を整えることは、日本の将来にかかわる大切なことととらえられています。

図 ライフサイクルでみた社会保険及び保育・教育等サービスの給付と負担のイメージ

厚生労働白書より

「出産育児一時金」は、出産にかかる費用負担を軽減することを目的にした制度。子ども1人につき42万円(※)を受け取ることができます。平均的な出産費用は約49万円ですから、7万円程度が本人負担ということになりますが、お産の状況やバースプランによってはもっと高額になることも、逆に本人負担がまったく生じないこともあります。

※妊娠週数が22週に達していない等、産科医療補償制度対象出産ではない場合は40万4千円

「医療費控除」は出産費用や妊婦健診等の本人負担分について、税金の計算から省いてもらう(控除)制度。その分税金が安くなります。ただし、入院中の個室利用料金やパジャマ等身の回りの品の購入代金は対象外です。一方、健診や出産のための病院への交通費は含まれる等複雑な面があるので、確定申告に慣れていない場合は、書き方や計算の方法も含めて税務署に相談することをお勧めします。

出産手当金」は、出産前に引き続き出産後56日までが対象期間です。ワーキングママの場合、産休が終わるとそのまま育休へ移行する人が少なくありませんが、その際には経済的なサポートも産休中の「出産手当金」から育休中の「育児休業給付金」へ変わります。

図 出産手当金と育児休業給付金

「育児休業給付金」は、雇用保険に加入している会社員等の育児休業中の収入減を補うための制度です。最初の半年はお給料の67%相当(上限あり)を、それ以降は50%相当を受け取ることができます。2017年10月からは育児休業に関する法律が変わり、保育園に入れない等の場合には、子どもが2歳になるまで育児休業を延長できるようになりました。それにともない育児休業給付金を受け取ることのできる期間も長くなります。また、パパが育児休業を取得すれば育児休業給付金を受け取ることができます。なお、産休・育休中は健康保険料や厚生年金保険料の支払い免除も受けられます。

「児童手当」は、子どものいる家庭の経済的な負担軽減のための制度。支給される金額は子どもの年齢や人数、所得等によって変わります。

図 児童手当の概要

フリマアプリや近しい人のおさがりを活用! ベビー用品で節約

小さくて可愛らしいベビー用品の準備にウキウキしない人はいないかもしれません。あれも欲しい、これも必要かも…とつい買いすぎてしまいがちですが、これから始まる長い子育て期間を考えるとここでお金を使いすぎるのは得策とはいえません。

まずは「1年以上使うもの」と「来シーズンには使わないもの」を区別してみましょう。肌着や洋服類はすぐにサイズアウトしてしまいますし、汚れることもしばしば。可愛いデザインも着脱しにくい、赤ちゃんにとって着心地が悪い等の理由で出番が限られてしまうことがあります。兄弟姉妹ができれば再利用も可能ですが、準備は最低限にして必要なときに買い足す方が経済的でしょう。一方ベビーカーやチャイルドシートは数年使うものですし、子どもが気に入って乗らないことには意味がないので、落ち着いてから赤ちゃんと一緒に試乗する等してじっくり選んだ方が失敗しません。

地域で開催されるフリーマーケットは、ベビー用品を安く手に入れることができるので重宝します。また、「メルカリ」や「フリル」、「ラクマ」等といったスマートフォンアプリでもベビー用のリサイクル品を気軽に購入することができます。試着のみの新品もあるので、リサイクル品には抵抗があるという人ものぞいてみる価値がありそうです。

お祝い金や児童手当からスタート! 教育資金準備

子どもが生まれたら、あらためて考えたいのが家計の管理と貯蓄・運用計画です。とくに教育費は、子どもの成長にしたがって高くなりがちですから、早めに準備を始めるに越したことはありません。できれば出産のお祝い金も、生まれた月の翌月からもらえる児童手当もきちんと区別して管理したいものです。児童手当は、生まれ月や兄弟の数等にもよりますが総額でおよそ200万円(詳細は上記「児童手当の概要」の図参照)ですから、教育費準備の柱になるはずです。

具体的な方法としては、いつまでにいくら貯めるかが明確にわかる定期預金の積み立てや学資保険、国債等のほか、比較的高い利回りが期待できるけれど将来受け取る金額が不確実な投資信託という選択肢もあります。子どものための投資を優遇する「ジュニアNISA」や長期積立投資を優遇する「つみたてNISA」といった税制上のお得な制度も用意されています。例えば7~8割を確実に準備できる方法で、残りは不確実だけれども利回りが期待できる方法でという風に組み合わせるのも選択肢の1つでしょう。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャル・プランナー 國場弥生

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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