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「規制のサンドボックス制度」が日本で生まれたワケ 内閣官房参事官・中原裕彦氏に聞く

「人工知能(AI)の台頭によって仕事が奪われる」という言葉を聞くことも少なくないのではないでしょうか。現在、世界では人工知能やIoTなど、さまざまな新技術を活用して、今までは考えもつかなかったようなサービスが次から次へと生まれています。日本でもさまざまなサービスが誕生していますが、新プロジェクトを遂行しようとしても、法規制がどの程度絡むのか分からずに、途中でプロジェクトを取りやめてしまう場面があった人もいるのではないでしょうか。

そんな日本の状況を踏まえ、政府は新成長戦略のもとで新しい施策をどんどん打ち出しています。そのひとつが新技術等実証制度、(通称 プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度)です。2018年6月6日に施行された生産性向上特別措置法によって創設された制度ですが、創設の理由や概要はどのようなものなのでしょうか。内閣官房 日本経済再生総合事務局(未来投資会議)の参事官・中原裕彦氏に本制度の概要についてお聞きしました。

「第4次産業革命では日本でも新技術の社会実装が急務」規制のサンドボックスの概要とは

−−まずは、規制のサンドボックスの概要を教えていただけますでしょうか。

中原氏:サンドボックスとは、すなわち「砂場」の意。砂場ではお子さんが、砂を使ってさまざまな形のものを自由に作って壊す、という行為を繰り返すことができます。規制のサンドボックスは、まさしく「規制の砂場」と呼ばれるように、プロジェクト毎に、期間や参加者を限定したうえで、そこでさまざまな実証実験を行い、さまざまなデータを収集することで、規制の見直しにつなげていきます。

(画像=PIXTA)

いわゆる、人工知能(AI)やロボットなどの新技術が産業を大きく変革する「第4次産業革命」を迎えるにあたって、新技術の社会実装が急務となっています。限定された砂場のように、リスクが適切にコントロールされている場所でトライアルを行い、実証できる舞台を用意するまでの一連のスキームを創設したのが今回の規制のサンドボックス制度です。

(画像=PIXTA)

「限定された一定の場所」は、何も地理的な条件により設定することのみならず、主にバーチャルな「P2P」と呼ばれる空間をも対象としています。そういったサイバー空間で、何らかの基準で集められた限定メンバーを対象に期間を限定して実証を行うのがこの制度のポイントです。

事業者と政府の対話と制度作りは時代の要請

−−なぜ今、このサンドボックス制度が必要となったのでしょうか?

中原氏:これは、現在、政府において強力に推し進めている成長戦略の中の柱をなすものです。

これまでも素晴らしいビジネスのアイデアをお持ちのベンチャー企業や中小企業の方々、もちろん大手企業の方々にもたくさんいらっしゃったと思います。私たちはそうしたアイデアを実現するために、障壁となる規制を所管する省庁と議論の場を設け、少しでも前に進めようと考えてきました。

ところが、実際に規制の見直しを行うに当たっては、その新しいビジネスに社会ニーズがどれだけあるのかということと、新しい制度が施行されて起こりうる濫用の懸念について、こうやれば上手くいくという方法を提示することが求められるのが通常です。

(画像=PIXTA)

もちろん、実証実験をしたいと思う企業等の起案者の方々は、弊害への防止策を十分に検討したうえで話をお持ちいただくのですが、監督する省庁の立場としては、どうしても「果たしてそれで十分なのか?」という観点から議論が生まれます。この場合において、規制改革を要望される方にしてみれば、そうしたことを実際にやってみることができないため、そのビジネスがどのような社会的インパクトを与えるのかを机上で議論しても、なかなか証明することが容易ではなく、かなりの時間を要することになります。規制を制定した際には想定もしていなかった新技術であればなおさらです。

これまではそのような問題が生じたときには、議論を積み上げると同時に海外事例を提示しながら説明して、理解を得ることで話を前に進めてきました。ところが、現状では「Winner takes all」「ドッグイヤー」の名にふさわしいほど技術革新が激しく進んでいて、時間をかけて制度改革を行ったとしても、それができあがったときには、すっかり時代遅れになる状況もありえると思っています。

ですから、この時代の状況にできる限り寄り添った制度を設け、制度を利用する企業やプロジェクトメンバーの方々の付加価値を最大限に高めるような機能を果たさなくてはいけないと考えています。つまり、企業等の事業者と利用者である消費者との対話のなかで新しいものを作っていく必要があるということです。そのためにも実証によって新しいデータを収集したり、成果を得たりして、その次の議論につなげていく、あるいは社会実証に繋げていくことが重要になります。

一元窓口は事業者と各省庁を結びつけるプラットフォームの役割

−−そうなりますと、相談者との密接なやりとりが重視されそうですね?

中原氏:そうですね。このサンドボックス制度では内閣府と連携し、内閣官房内に一元的窓口として、チームを設けました。この窓口では皆様のいろいろな相談を受け付けて、他の官庁へとつないでいくつもりです。これまでは「この新技術に関する相談をしたいと思っていても、どこの役所に行けば良いのかわからない」と迷いがあったかもしれません。こういった迷いをできる限りこちらサイドで紐解いて、該当する各省庁はもちろん国家戦略特区や規制改革推進会議とも連携しながら進めていきたいと考えています。

もちろん、すでに各省とも連携体制を固めていて、私たちが先頭になって進めていくというルールを定めています。

−−まさに、申請サイドの背中を押して伴走するスタンスなのですね。

中原氏:規制のサンドボックス制度を実際に活用して実証実験を行いたいというご要望をいただいたときには、規制官庁との間で議題になるものは何か、そしてどうすればご要望の実証が可能になるのかを私たちのなかで整理してから各省庁に繋ぎます。そして、規制法令との関係でどこまでであれば実証が可能なのかどうかを私たちが最大限サポートして官庁と議論を進めていきたいと思います。

−−大変心強いと感じます。国の機関に相談するわけですから、あまりにも思いつきレベルの話を持ちこむのもどうかと心配になる人もいるかもしれません。ずばり、どの程度アイデアを固めてからお持ちすれば良いのでしょうか。

中原氏:ビジネスのゴールや内容を明らかにしていただきたいと考えています。どのような目的で、どういった実証をやりたいか、あるいは作りたいモノ・コトをお持ちいただければ、こちらから制度上の問題になりそうなことを可能な限りガイダンスいたします。その対話のなかで、相談者の皆様が本当にやりたいことが明らかになってくるのではないかと考えています。

これまでの前例のないことに取り組むのですから、「前例がないからわからない。だから辞める」というスタンスでは永遠に前に進めませんし、新しいものは生まれてこないと思っています。そのため、私たちも相談者の方々と一緒に前に進めていくことが重要だと考えています。

中原裕彦(なかはら ひろひこ)
内閣官房 日本経済再生総合事務局 参事官

1991年 東京大学法学部卒業、通商産業省入省、大蔵省証券局総務課、米国コーネル大学 Ph.D.candidate、法務省民事局参事官室、中小企業庁制度改正審議室長、経済産業省知的財産政策室長、内閣府規制改革推進室参事官、経済産業省産業組織課長等を経て2016年から現職。規制のサンドボックス制度の創設に尽力。

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