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オリンピック、弾劾裁判後のブラジル

ブラジルの国旗を表したペイント画像
(写真=PIXTA)

 ブラジルでは8月25日にルセフ大統領の弾劾裁判が開始され、8月31日頃には判決が出る見込みです。裁判は上院議員の総議席81の3分の2にあたる54票の賛成で罷免(ひめん)が成立します。すでに8月10日の上院における弾劾審議を開始するか否かの投票では59票の賛成となっており、罷免成立が濃厚です。その場合、テメル大統領代行が正式に大統領となります(任期は2018年末まで)。野党から弾劾請求が提出されたのが2015年10月下旬でしたが、ようやく政治的な混乱の出口が見えてきました。

 弾劾裁判後の最大の注目点は、財政改革が進むのかです。テメル暫定政権は議会において罷免支持を得るため財政的な妥協(公務員の給与引き上げ等)を行ってきましたが、テメル氏が大統領になれば、財政改革に注力できるとみられます。

 テメル暫定政権は歳出の伸びをインフレ率以下に抑制する憲法修正案を6月に発表しています。ルーラ前大統領以降、インフレ率の伸び以上に社会保障等の歳出を拡大することで貧困所得層の底上げを図ってきました。これを軌道修正することは2000年の財政責任法導入以来の画期的な出来事で、財政規律の回復が期待できます。

 財政収支GDP比が2016年まで2年連続で約▲10%と悪く、市場寄りの連立パートナーをつなぎとめるためにも財政改革を進めざる得ない状況です。10月2日の大型地方選挙を通過すれば2018年まで目立った選挙がないため、上記の財政改革法案を通しやすくなるとみられます。

 経済は2016年まで2年連続で前年比▲3%以上の景気後退が続く見通しですが、足元は景気悪化に歯止めの兆しがみられます。インフレ圧力の緩和や政治的混乱の収束期待により企業や消費マインドが改善しています。2016年下期以降、経済成長率は前期比で小幅プラスに転じる可能性も出てきました。

 8月21日にリオデジャネイロ・オリンピックが終了しました。五輪によるインフラ投資は当初の試算ではGDP比0.9%とみられていましたが、高速鉄道計画のとん挫や地下鉄延伸計画の遅れ等で見通しを下回ったとみられます。また、五輪期間中の観光収入も治安やテロへの懸念で低調だったとみられます。そのため、五輪終了後の反動減も限られるとみられます。

 また、資源投資ブームの終了や財政悪化による歳出カットといった五輪以外のマイナス要因が景気を下押ししていました。この点、このところの原油や鉄鉱石等の商品市況の上昇は資源関連企業の輸出や業績を下支えとなります。また、レアル高もドル建て債務の実質的な負担緩和につながります。ブラジル全体の総固定資本形成(設備投資や建設投資等)の1割弱に相当する投資を行った国営石油大手ペトロブラスは、2016年4-6月期は4四半期ぶりに黒字となりました。ブラジルの総固定資本形成は2017年以降悪化に歯止めが見込まれます。ブラジル中央銀行(中銀)集計の市場予想では、2016年の経済成長率は前年比▲3.2%とマイナス幅がやや縮小、2017年は同+1.2%と3年ぶりにプラスに転じる見込みです。

 懸念されたインフレ圧力は緩和傾向にあり、2016年10-12月期には前年比+7%台に鈍化、2017年はインフレターゲット(4.5%±1.5%)のレンジ内である同+5%台に鈍化するとみられます。中銀はインフレ見通しの改善を受けて11月会合以降、利下げを慎重に判断するとみています。市場では政策金利は2016年末時点で13.75%と予想されています(現状は14.25%)。

 ブラジルレアルはルセフ大統領の罷免期待により、対ドルで年初来高値を更新する堅調な展開となっています。財政改革法案が成立し、景気回復の動きが確認されれば今後も底堅く推移するとみられます。リスクとしては、①米国の利上げ観測の再燃により投資家がレアルをはじめ新興国通貨に対して慎重姿勢となる、②テメル政権下で幹部の汚職疑惑が続き、政権の支持率が低下する、等が挙げられます。 

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