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岩村充教授に聞く「ビットコインの価値と今後の動き」前編

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金融×ITの造語である「Fintech」。Fintechといえば、何を思い浮かべるでしょうか。家計簿アプリ、ロボアド、クラウドファンディング……これらが思い浮かぶかもしれません。Fintech関連は話題性も高く、メディアでもよく報道され、次々と新しいサービスが生まれています。

その中でも、今注目を浴びている分野の一つに「仮想通貨」があります。2017年4月には改正資金決済法等がスタートし、金融庁も事務ガイドラインを出すなど法整備も徐々に進められています。

そこで、日本銀行出身で仮想通貨に詳しい『貨幣進化論–『成長なき時代』の通貨システム』や『中央銀行が終わる日:ビットコインと通貨の未来』などの著書もある早稲田大学大学院経営管理研究科の岩村充教授にお話をうかがいました。(このインタビューは2017年7月11日に行われました)

ビットコインの価値とは

最近、仮想通貨の話題がメディアでもよく取り上げられています。特にビットコインが話題になることが多いようです。去年に比べると、ビットコイン価格は大きく上昇しています。これだけ話題になっているので、ビットコインを始めてみようと思う人やビットコインに興味のある人もいるでしょう。

――最初に、ビットコインの価値が何処から生じるのかについて教えてください。

岩村氏:ビットコインでは、それを作り出すために必要なデータ探し問題を解くのにPOWと呼ばれるコストがかかるということが、その価値の裏付けになっています。コストがかかるということが価値の裏付けになっているというところは、採掘にかかるコストが価値の裏付けになっている金や銀と似ています。このため、こうしたデータ探しのことを「採掘」つまり「マイニング」と呼ぶのですが、ビットコインと金や銀とでは、そこで働いている原理が大きく違います。金や銀では、市場価格が上昇すれば採掘が進んで価格の上昇はその分だけ緩やかなものになりますし、逆に下落が始まると採掘が少なくなり価格は下支えされます。ところがビットコインの価格にはそうした市場原理が働きません。

――ビットコインの価格はどのような性質を持つのでしょうか。

岩村氏:ビットコインにも市場原理はあります。ただし、その内容が違っています。ビットコインの価格が上昇してマイナーつまりマイニングに参加する人が増えると、データ探しに必要な計算問題が難しくなるので市場価格に見合った計算コストがかかるようになります。一方、価格が下がるときにはマイナーの採算は悪くなりますから、それに合わせて彼らが退出し、したがって計算問題もやさしくなり市場価格とコストはバランスします。それがビットコインの市場原理です。

ところで、そうした供給サイドへの参入は徐々に起こる一方で、退出の方は設備の廃棄や休業あるいは倒産などという痛みをともなうため急激に起こりがちになります。そうなると、価格の上昇はじわじわ進むが、下落のときはストンと落ちることになります。ただ、こうした参入と退出の特性から生じる値動きの非対称性自体は、市場で取引される資産の多くにみられる特性で、ビットコインにだけ特有のものとは言えません。

問題は、ビットコインの供給量が単位時間当たりで固定されていることです。これでは、価格の上下が供給量を増減させるという関係が生じません。金や銀は供給増が市場価格を冷やし、供給減が市場価格を支えてくれるので、それが価格変動を緩やかなものにしてくれるのですが、ビットコインではそうは行かないわけです。ですから、ビットコインは金や銀などと比べても荒い値動き、とりわけ下落のときには暴落的な値動きをする可能性が高いと思われます。ビットコインに投資をするのなら、ビットコインの市場価格にはそういうリスクがあるということをわかっている必要があります。

話題のイーサリアムとは

仮想通貨には、ビットコイン以外にもさまざまな通貨がありますが、なかでも「イーサリアム」が話題になることが多くなりました。

――ビットコインとイーサリアムは、どちらも値動きが似ているように見えます。それはなぜなのでしょうか。

岩村氏:イーサリアムもマイニングを行うので、ビットコインと同じような価格の動きが生じることに不思議はありません。もっとも、ビットコインとイーサリアムが完全に同じルールでマイニングするのであれば、価格が安くてマイニングの採算が悪い仮想通貨から、価格が高くて採算が良い仮想通貨へとマイナーが移動するので、価格が高い通貨はどんどん値上がりし安い通貨はどんどん値下がりしてしまうはずなのですが、ビットコインとイーサリアムはマイニングの仕組みがずいぶん違うのでマイナーは簡単には移動できないのでしょう。それが、両者が同じような値動きになる理由のように思います。いずれにせよ、今回の動きは、価格の上昇が需給両面での連想を呼んで新規参入を誘発しているせいと思われます。繰り返しになりますが、普通の商品では価格の上昇は供給増を呼んで市場を冷やしてくれるのですが、ビットコインにはその面がありません。連想が連想を呼び、価格上昇が価格上昇を呼びやすいのです。

――イーサリアムでは、イーサリアム上の仮想通貨イーサを使って、ICOという新規株式公開のような資金調達が流行しているようです。新しい資金調達 の形ではないかと思われる一方、不安を指摘する声もあります。先生はICOについてどのようにお考えでしょうか。

岩村氏:ICOでオファリングしているコインこそ、本当に“仮想”の通貨であると感じています。マイニングの際にかかるコストが価値の裏付けになっているビットコインとも違い、リップルという決済システムの利用チケットのような役割を与えられているXRPとも違って、ICOが作り出す「コイン」は、何が価値を裏付けるのか、それが明らかになっていません。たとえば、普通の会社で資金が必要になったら、株式や債券など、誰もが知っている法制度に則って資金を調達します。ところがICOによるコインを持っていると、どの制度に則って何を得られるのか、それが明確になっていないものが多いようです。

もちろん「明確でないから存在するべきでない」というつもりはありません。現に、ICOによって何百億も資金が集まったという事実があるのですから、そこに人々の期待があることは否定できないでしょう。しかし、何が価値の源泉になっているのかが明らかになっていなかったために崩壊したと思われるバブル的なブームの例は、歴史の中にいくつも存在しています。高い値段が付く理由を説明できないものは、一気に無価値となる可能性もあるのです。

>>岩村充教授に聞く「ビットコインの価値と今後の動き」後編に続く

岩村 充(いわむら・みつる)
早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
1974年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。営業局、総務局、ニューヨーク駐在員を経て、日本公社債研究所開発室長。日本銀行金融研究所研究第2課長、日本銀行企画局兼信用機構局参事。
1998年より早稲田大学大学院教授。国際会計基準委員 会委員や政府の各種委員会の座長や委員を歴任。博士(早稲田大学)

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