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安倍首相増税先送りを発表

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(写真=PIXTA)

消費増税の見送りを正式表明

 安倍首相は日本経済の下振れリスクに備えるため、消費税率引き上げの再延期を正式に表明しました。秋には経済対策を講じる方針も示しました。財政状況への懸念はあるものの、日銀がマイナス金利付き量的・質的金融緩和を推進するなかで、金利の上昇余地も限定的となるでしょう。増税の見送りや財政出動は短期的には日本経済にプラスですが、本質的な成長力の強化には成長戦略の着実な実行が不可欠であり、2019年10月までに消費税率の引き上げが可能な経済状況を作り上げることができるかどうかが問われることになるでしょう。

リスクへの備えとしての増税見送りを含む政策総動員

 安倍首相は6/1の通常国会閉会にあわせて記者会見を行い、2017年4月に予定されていた消費税率の10%への引き上げを19年10月まで延期することを正式に表明しました。

 安倍首相の会見での説明によると、今回の消費税率引き上げの見送りは、5/26~27に開催された伊勢志摩サミットでの合意に基づき、新興国経済の陰り等のリスクに備えるための対応ということになります。なお、こうした対応の一環として、会見では秋には総合的かつ大胆な経済対策を講じる方針を示しましたが、金額規模や内容について具体的な言及はありませんでした。一方で、20年度の財政健全化目標は堅持すると述べており、その実現のためには19年10月が消費税率引き上げのぎりぎりのタイミングと判断したということでしょう。

 これまで安倍首相は、リーマンショックあるいは東日本大震災のような事態が発生しない限り、予定どおり消費税率を引き上げていく考えを示していました。しかし会見では、従来の説明とは異なることになるが、危機に陥ることを回避するために内需の腰を折りかねない消費税率の引き上げは延期すべきとの新たな判断に至ったとしました。もっとも、公約違反という批判は安倍首相も認識しているため、こうした判断については7/10が投票日となる参院選で国民の信を問いたいと述べました。

短期的には日本経済にプラスだが、次回の引き上げまでに成長力強化が問われる

 今回の会見で、消費税率引き上げの再延期が表明されたものの、すでに報道等で伝えられていた内容が多く、追加的な情報はありませんでした。このため、金融市場の反応も限られたものとなる可能性が高いと思われます。とくに、本来であれば財政規律の低下が懸念される債券市場でも、日本銀行がマイナス金利を採用し、大量の国債買い入れを行っているもとでは、金利上昇余地は限定的でしょう。

 日本経済への影響としては、短期的には増税の見送りを含む財政出動はプラスと判断されます。2014年4月に消費税率を8%に引き上げて以降、現時点においても消費の低迷が続いていることを考えれば、増税は見送るべきという意見に一定の説得力はあるでしょう。

 もっとも、今回のように現実に何かが起こっているのではなく、リスクに備えるという理由で増税を見送るのであれば、19年10月に本当に消費税率が引き上げられるかどうかも不透明といえます。高齢化が進む日本では、医療や介護といった社会保障の需要が増大することは避けられず、いつまでも増税を見送り、社会保障の給付水準を見直すこともなければ、財政状況のさらなる悪化を招きかねません。前述のように、日銀がマイナス金利付き量的・質的金融緩和を推進するなかで、当面は金利の上昇余地は限られるとみていますが、中長期的には財政規律に対する懸念が浮上するリスクに注意が必要です。

 また、財政政策はあくまでも経済を下支えし、改革のための時間を稼ぐ政策というべきものであり、本質的に成長力を高めるためには、人口減少対策のほか、規制改革や労働市場改革といった成長戦略の着実な実行こそが不可欠といえます。今回の見送りによって稼いだ時間を活用して、19年10月に本当に消費税率の引き上げが可能な経済状況を作り上げることができるのかどうかが問われていくことになるでしょう。

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