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「ゾンビ企業」が多数! 中国の鉄鋼業界はどうなっている?

Zombie
(写真=PIXTA)

中国による鉄鋼の過剰生産が、世界的な政治問題になっています。

ゾンビ企業とは赤字を計上し続けながらも存続、本来ならば倒産していてもおかしくない、いわば“半死不活”の企業のことです。

中国のゾンビ企業の多くは“国有企業”で、地方政府や銀行からの支援で生命を維持しているから厄介です。ゾンビ企業の背後にはこれらの支援があり、過剰な生産設備や在庫、雇用を抱え、息も絶え絶えの状態でゾンビのように生存しているのです。

世界の生産の半分を占めた中国の鉄鋼業

 世界鉄鋼協会の統計によれば、2015年の世界の粗鋼生産量は総計16.22億トンです。そのうち中国の生産量は8.03億トンで、全体の49.5%を占めています。前年に比べ2.3%減少しましたが、それでも世界の半分を占めているのです。

少し前の中国の粗鋼生産量を見ると、2004年には2.8億トンに過ぎませんでした。その後急拡大して、2012年には7億トンを突破しました。この過程で、需要に比べて生産能力が過剰になりました。

この過剰生産は、鋼材価格の大幅下落が取引価格や在庫評価額を下げたことにより日本の鉄鋼各社の業績にも影響を与えており、鉄鋼大手3社の2016年3月期連結決算は全社が大幅な経常減益でした。新日鉄住金が前期比56%減の2,009億円、神戸製鋼所が7割減の289億円となっています。
 日本の鉄鋼メーカー以上に打撃を受けたのは欧州アルセロール・ミタル、米USスチール、韓国ポスコなどで、いずれも昨年度は赤字となっています。

中国では、過剰生産を輸出によって解消させているため、競合関係にあるアジアを中心に、中国製品のダンピングの影響が懸念されています。中国の過剰生産問題は、2016年5月に開催された伊勢志摩サミットでも、6月の米中戦略・経済対話においても話し合われています。

しかし、原料となる鉄鉱石や銅、石炭や原油などの資源動向を見ると、あいかわらず軒並み輸入量が大幅に拡大しています。中国当局も認識しているはずの過剰設備や過剰生産の改善とは、逆行しているようです。

ゾンビ企業が生まれている背景と理由

中国では、毎年3月頃に全国人民代表大会が開かれますが、今年の中心課題は経済改革と景気対策です。その中で、李克強首相はゾンビ企業を整理・統合するとの決意を表明しています。世界市場を脅かすまでのゾンビ企業が生まれた背景はどこにあるのでしょうか。

その理由として、河南省と山西省を取り上げて説明したいと思います。ここは、歴史的に炭鉱が密集する地方ですが、昨今の石炭の需要減少と価格低下で、炭鉱の多くは経営継続が難しくなっています。

また、地方政府は不動産バブルに便乗して各地に小さな製鉄所を建設しました。その結果、供給過剰による鋼材価格の急落を招き、これらの製鉄所は経営難に陥っているのです。

しかし、こうした製鉄所は大量の雇用と生産設備を抱えてしまったため、閉鎖することができない状態になっているのです。このような企業の整理・統合のため、中国政府は失業者対策として、日本円で1兆7,000億円規模の基金を設けるとしています。ようやく中国政府が過剰設備の削減に本気で取り組むことを決意したのです。

ゾンビ企業だけじゃない 失業対策  2億人からなる農村部からの出稼ぎ者対策

中国の失業者問題は、ゾンビ企業を多く生み出している鉄鋼・石炭業界に限りません。

今後、鉄鋼・石炭業界だけではなく、過剰な生産設備を抱える業種で、ゾンビ企業の雇用500~600万人を削減する見込みです。

また、中国では農村から約2億人の農民が沿海部を中心に出稼ぎに来ているといわれます。彼らは低付加価値製造業の工場の労働力として重宝されてきました。しかし、昨今、中国国外企業の工場は相次いで中国を離れて、人件費の安いベトナムなど周辺国に移転しています。このため、1,000万人以上の中国の出稼ぎ労働者が失業しているといわれています。

経済成長を遂げた中国が、今後の成長を考えるうえで抱えている課題は、ゾンビ企業対策や鉄鋼・石炭業に対する対策だけではなさそうです。再建や存続が見込み難いゾンビ企業の整理が先送りされないか、今後も 鉄鋼業界の動向には注目したいところです。

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