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税金は難しくない?! 初心者でもわかる確定申告 (後編)

 

(写真=istock)

 確定申告の基本を税理士の本間会津子さんがお教えします。前編では、「寄付金控除」「医療費控除」「住宅借入金等特別控除」についてお伝えしました。後編ではまだある年末調整では控除ができないものの紹介や、実際にどの程度控除されるのかを事例を交えてお見せします。

証券投資で損をした【株式等に係る譲渡所得(損失)】

株式や投資信託で損をしたときは?
上場株式等の配当や売却益については、源泉徴収ありの特定口座で運用している場合には所得税等および住民税が源泉徴収されているため確定申告をする必要はありません。
しかし、こんなケースもあります。A特定口座で売った株式は売却益がでた場合、利益にかかる税金は自動的に引かれます。一方、B特定口座で売った株式は売却損がでたという場合、確定申告をすることによってA特定口座の売却益とB特定口座の売却損を相殺し、A特定口座から引かれた税金が戻ってきます。
もし、相殺をしてもB特定口座の売却損を引ききれない場合は、その売却損は翌年以降3年間にわたり上場株式等の売却益または配当と相殺することができます。この場合、毎年確定申告をすることが必要になります。

災害や盗難にあった【雑損控除】

災害や盗難にあったときは?
雑損控除とは、資産について災害や盗難等によって損害を受けた場合に、その損失の一部を所得から差し引くことができる制度です。

詐欺や恐喝による被害は雑損控除の対象となりません。したがって、マイナンバー詐欺や振り込め詐欺等による被害は雑損控除が適用されません。また、雑損控除の対象となる資産は生活に通常必要な資産に限られるため、別荘や貴金属等の損害は雑損控除の対象とはなりません。
災害により大きな損害を受けた場合は、雑損控除にかえて「災害免除法による所得税の軽減免除」という制度の適用を受けることができます。この制度は、災害によって受けた住宅や家財の損害金額がその時価の1/2以上で、かつ、災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下のときにおいて受けることができます。この制度により軽減される所得税の額は、所得金額の合計額(給与収入のみであれば給与収入-給与所得控除額の金額)が500万円以下である場合には、所得税の額の全額になります。

年末調整に間に合わなかった

年末調整に間に合わなかったときは?
例えば、年末調整で会社に生命保険料控除証明書の提出を忘れた、年末調整の後で妻のパート収入が103万円未満であったことが判明し、配偶者控除を受けられたことがわかった場合等は、サラリーマンでも翌年以降に確定申告をすれば、納めすぎている税金の還付を受けることができます。

サラリーマンの経費も控除ができる【特定支出控除】

サラリーマンの経費も控除される?
特定支出控除とは、サラリーマンの次の費用(特定支出)が控除できる制度です。
控除ができるのは、特定支出が給与所得控除額(税金計算の際、給与収入から控除する金額)の1/2を超える場合、その超える部分の金額を給与所得から引くことができます。給与所得控除額は給与収入600万円の場合174万円になります。特定支出控除は特定支出の額がこの1/2の84万円を超えなければ使うことができないため、大変ハードルの高い制度です。

いかがでしたでしょうか?
サラリーマンでも確定申告をすると税金が戻ってくるかもしれません。
なお、各控除を受けるためにはさまざまな要件がありますので、必ず国税庁のホームページ等でご確認ください。

事例で見る! 確定申告でこれだけお得

夫:42歳(サラリーマン 給与収入600万円)
妻:38歳(専業主婦)
子:10歳(小学生)給与所得控除額:1,740,000円
社会保険料控除額:913,800円
配偶者控除額:380,000円
基礎控除額:380,000円
課税総所得金額:2,586,000円
所得税および復興特別所得税:164,483円
住民税:271,000円

ふるさと納税の事例
年収600万円であれば68,000円
(「ふるさとチョイス」税額シミュレーションより)
68,000円の寄付をした場合、66,000円の税金が控除されるため、実質2,000円で高級和牛などの特産品を手に入れることができます。

医療費控除の事例
【1年間に支払った医療費が20万円である場合】          
還付される所得税等:10,210円
安くなる住民税:10,000円

セルフメディケーションの事例
【1年間に支払った対象市販薬が5万円である場合】
還付される所得税等:3,880円
安くなる住民税:3,800円

住宅ローン控除の事例
住宅ローンの年末残高が2,000万円の場合
還付される所得税等:164,483円
安くなる住民税:35,500円

株式や投資信託の事例
A特定口座の売却益:50万円 差し引かれた税金:所得税等76,575円 住民税25,000円
B特定口座の売却損:100万円
相殺:50万円-100万円=△50万円(翌年以降3年間繰り越し)
還付される所得税等:76,575円
安くなる住民税:25,000円

災害や盗難等の損害の事例
損害金額:100万円
災害関連支出:20万円
保険金30万円
雑損控除の金額
還付される所得税等:48,396円
安くなる住民税:47,400円

おさらいチェックリストで確認してみましょう!

ふるさと納税を行った  
医療費の合計額が10万円を超える  
支払った市販薬の合計額が12,000円を超える  
返済期間が10年以上の住宅ローンを利用している  
株式や投資信託で複数の特定口座を利用し、売却損のある口座がある  
災害や盗難などによって損害を受けた  
年末調整に提出書類などが間に合わなかった  
特定支出が給与所得控除額の1/2を超える  

※2017年1月1日~12月31日の間で以下にあてはまる方(税金が戻ってくる可能性がある主なものを記載しています)
※配偶者控除、配偶者特別控除は2018年分から控除額や適用要件等が改正されます。 

執筆・監修 税理士 本間会津子
文責 日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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