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インターネット時代の「ニューエコノミー(新経済)」?

(写真=kurhan/Shutterstock.com)

自動車整備士に支払っていた1,000ドルがネット通販大手に払う250ドルに

アメリカは国土が広いこともあり、「クルマ社会」であると言われますが、これはクルマ好きの私にとって、とても暮らしやすい環境でもあります。もちろん、ドライブも好きですが、特に楽しいのが古いクルマの修理です。週末に1990年代のドイツ車をトンカン修理していると、時が経つのを忘れ、夕方になってから家族が迷惑そうな顔をして駐車場まで呼びに来ることもしばしばあります。

自分でクルマを修理するようになった最大の理由は、アメリカの自動車修理工場に持っていくと、どんなに簡単な修理でも代金が1,000ドルを超えてしまうから。しかもこちらの整備士は、たとえそれが正規のディーラーであっても、修理代だけ請求しておいて「直せない」ことが多く、ひどい時には状態を悪化させることもあります。

どうせ修理代が高く、しかも直せないのであれば、自分で修理したほうが良いのではないか。そう考えて、最近はインターネット通販で部品や工具を買いそろえ、ユーチューブにアップロードされている「修理の仕方」の動画から学び、いざ、チャレンジ! さすがにエンジンやトランスミッションの分解はしませんが、電気系統やブレーキ、サスペンションの修理、簡単な板金や塗装などは、自分でできるようになりました。かかる実費は修理にもよりますが部品代がほとんどで、プロに頼むコストの4分の1程度。しかも修理は「ジャパニーズ・クオリティ」です(笑)。

これまで自分が修理工場の整備士に支払っていた1,000ドルは、米インターネット通販大手に支払う250ドルに取って代わりました。そして、これまで修理工場の待合室で費やしていた無駄な数時間は、ユーチューブが流すエンジンオイルのコマーシャル(30秒程度)を見る時間と、修理の時間(趣味の時間?)に変わりました。

インターネットの活用が経済そのものの仕組みを大きく変える

18世紀のイギリスの自由主義経済学者アダム・スミスは、労働の専門化、すなわち分業によって経済が拡大すると論じました。経済全体で見れば、クルマの修理は整備士に頼むことが最も国の生産性を高めるという発想です。

もちろん、素人の自分がクルマを修理することが最も生産性が高いことだとは考えませんし、クルマを保有する誰もが自ら修理をするとも思いません。ただ、仮に今後、私のようにインターネットを活用し、整備士に頼らず、自分でクルマを直す人が増えたらどうなるか。いや、これはクルマの修理に限ったことではないでしょう。経済そのものの仕組みが大きく変わってきている、と言っても過言ではありません。1990年代には、IT企業などに代表される新しいビジネスを「ニューエコノミー(新経済)」と総称していました。それから約20年が経ち、インターネットがより便利になり、経済もさらに変わっていく。これが、インターネット時代の「ニューエコノミー」と考えています。

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