Home / お金のコラム / 「100%」はリスクが低い? 投資の「リスク」はどこまでとるべきか(前編)

「100%」はリスクが低い? 投資の「リスク」はどこまでとるべきか(前編)

(写真=Thinkstock/Getty Images)
「リスク」という言葉、金融商品や金融取引におけるそれと、日常生活で使うそれとは多少意味が異なっています。金融商品でリスクが高いと使うのは、お金が増えるのか増えないのか、得をするのか損をするのかが不確実な場合。どのような金融商品が不確実と考えられ、結果リスクが高く、リターンがあるのか見てみましょう。

資産運用におけるリスクの意味とは?

人生にはさまざまな選択の場面があります。進学、就職、結婚、引っ越し、転職…。そのようなとき、慎重に考え堅実な選択をする人、思い切った選択をする人、安定を求めながらも多少は冒険もしたいと選択する人など、それぞれの性格が出るものです。あなたは、どのようなタイプでしょうか?

自分のお金をどこに預けるか、どんな金融商品を選ぶか、資産運用においても、性格の影響は大きいでしょう。これからのライフプランを見据えつつ、自分の性格に合う選択をすることが、こんなはずではなかったという後悔やストレスを少なくするポイントです。ところが金融商品の種類は多く、仕組みも複雑なため、どのようなところをみて判断すればよいのか、わかりにくいものです。

金融商品には、お金を増やせる可能性と表裏一体でリスクがあります。このリスクの度合いから、いくつかに分類することができます。金融商品や金融取引でリスクという言葉を使うときは、日常生活で使う「リスク」とは多少意味が異なります。金融商品におけるリスクには、どんな意味があるかを知っておきましょう。

さて、ここで問題です。「森に迷い込んでしまったとします。これまで生きて戻ってきた人が1人もいない森に迷い込むのと、半分くらい無事戻ってくる人がいる森では、どちらのリスクが高いでしょうか?」

この問題を、金融商品のリスクという言葉でとらえると、リスクが高いのは……、「半分くらい無事戻ってくる人がいる森」となります。なぜなら、生きて戻れるかもしれないし、戻れないかもしれない。どちらになるかはわからない、不確実性が高いからです。誰も戻ってくることができない、つまり確実に戻れないことが最初からわかっているなら、結果は明らかですからリスクはありません。

このように、金融商品でリスクという言葉を使うときの意味は、まず不確実性です。お金が増えるのか増えないのか、得をするのか損をするのかが不確実で、その度合いが大きいときにはリスクが高いといいます。

例えば株式投資で儲かるかどうかは、そのときの株価次第。株価は変動していて、自分が買ったときよりも値上がりするか値下がりするかはわかりません。もちろん、値上がりすると予想するから株を買うのですが、予想が外れることもあります。得をするか損をするかは不確実です。つまりリスクは高いというわけです。

一方、預金は、元本が安全で金利は固定金利です。最初に示された金利で計算した利息がもらえます。あらかじめ満期時の受取額が決まっているから、リスクは低いということになります。

また、価格のブレ幅のこともリスクという言葉で表します。株価は変動幅が大きいからリスクが高いということになります。一方、預金は元本に変動はありませんからリスクは低くなります。

金融商品のリスクとリターンの関係についても知っておこう

金融商品の説明でよく使われるのが、「ハイリスク・ハイリターン」、「ミドルリスク・ミドルリターン」、「ローリスク・ローリターン」という言葉です。

リスクは、不確実性と価格のブレ幅のことでしたね。ではリターンとは何でしょう?収益のことです。プラスのイメージですね。しかし金融商品のリターンにはマイナスもあります。お金が増えたときはプラスのリターン、減ったときはマイナスのリターンとなります。リターン=収益は価格変動によって得ることができ、リターンにはプラスとマイナスがあるということです。

そして、リスクが高いものはリターンも大きい、だから「ハイリスク・ハイリターン」、リスクが低いものはリターンも小さい、だから「ローリスク・ローリターン」。この真ん中あたりなら、「ミドルリスク・ミドルリターン」です。

なんだか禅問答のようになってきたので、視覚的にリスクとリターンをイメージしていただけるグラフをご覧ください。

リスクと収益の振れ幅の関係

(みずほ証券のサイトより)

青とピンクの線は、それぞれにリスクの異なる金融商品の価格の変化を表しています。青い線の方が、価格のブレ幅が大きくリスクは高い、その分、リターンも大きくなります。プラスのみならずマイナスのリターンも大きいです。ピンクの線の方は、ブレ幅は小さくリスクは低い、その分、リターンも小さくなります。残念ながら、リスクが低くてリターンが高い金融商品はありません。高いリターンを求めるなら、大きなリスクを覚悟する必要があるということです。

ではここで、いくつかの金融商品をリスク・リターンの度合いで位置づけてみましょう。グラフをご覧ください。

(みずほ証券のサイトより)

安全性の高い預金はリスク・リターンともに低いところにあります。一方、運用のためにお金を投じる先として代表的なものは債券と株式ですが、債券、株式の順でリスク・リターンが高くなります。投資信託はどうでしょうか? 投資信託は、複数の株式や債券を組み入れて運用しています。どのような株式や債券が組み入れられているかにより値動きは異なりますから、一概にはいえません。ただし、分散投資されているので、理論上の位置づけは、株式よりはリスク・リターンは低くなります。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab.
フィナンシャルプランナー 坂本綾子

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

【おすすめ記事】
「100%」はリスクが低い? 投資の「リスク」はどこまでとるべきか(後編)
定年が見えてきた! 収入減少リスクは「副業」「投資」で乗り切る(前編)
投資の腕を上げるための心得 ―兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話
竹内先生に聞く「行動経済学と実験経済学から経済と投資を読み解くと」前編
プロも気にする投資用語「織り込み済み」