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大学進学が心配。親の負担が大きい日本の教育費 (前編)

(写真=Thinkstock/Getty Images)

2人に1人が4年制大学に進学する時代、子どもの教育費をどのように工面するのかは、親にとって大きな課題となっています。日本の教育費の実情について、世界と比較してみましょう。

海外と比べるとよくわかる日本の教育費負担の真実

子どもがいる家庭にとって、教育費の問題は悩ましいものです。少しでもいい教育を受けさせたいけれど、大学などの高等教育にはかなりの費用がかかります。教育を社会全体で支えるために、国や地方公共団体は税金から公費負担を行っていますが、日本は他の国に比べて、その支出が少ないと言われています。データをご紹介しましょう。

図1 公財政教育支出の対GDP比

このグラフは、国の経済規模を表すGDP(国内総生産)に対する公的な教育支出の比率です。日本は3.3%で、OECD各国平均である4.9%に比べ低い水準となっています。先進国において特に低いのがわかります。公的支出が少ないということは、その分、家計から出す割合が高いということです。
学校段階別の公費負担と私費負担の割合は次の通りです。

図2 教育費の公私負担割合(学校段階別)

幼稚園などの就学前教育の公費負担割合は43.4%。残りの56.6%は私費負担として家計から親が出しています。義務教育である小学校、中学校、さらに高等学校までを含む初等中等教育段階では公費負担の割合が約9割と高く、私費負担は1割程度となっています。ただし、この調査における私費負担は授業料など正規の教育機関への負担のみで習い事や塾など学校外教育費は含まれていません。また大学や専門学校などの高等教育段階では、日本の私費負担が高いこともわかります。

しかも大学の授業料は年々、値上がりしています。下のグラフは1980年から2014年までの大学の授業料の推移です。今後も値上がりしていく可能性は高いといえます。

図3 大学の授業料の推移

話題の「こども保険」で負担を減らせる?

2017年3月、「こども保険」の導入と、それによる「幼児教育・保育の無償化」が、自民党の若手議員でつくる「2020年以降の経済財政構想小委員会」から提言されました。社会の助け合いの仕組みとして、年金、医療、介護には公的保険があるが、子育てにはないことから、社会全体で支える「こども保険」を創設しようというものです。文部科学白書のデータでも紹介したとおり、日本では就学前と高等教育の私費負担が高いわけですから、実現すれば就学前の負担が軽くなります。

ただし、まだあくまで提言の段階であり、実現するかどうかはわかりません。また高等教育の費用については家計から負担する分を準備しておく必要があります。後編では高等教育の費用の準備方法について考えます。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
フィナンシャルプランナー 坂本綾子

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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