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アベノミクスの異次元緩和はいつまで続く? 春の嵐に荒れる相場と今後のシナリオ

相場も春の嵐? 4月の<中村克彦のテクニカルコラム>

今、気になる相場の話題をみずほ証券の中村克彦さんにわかりやすく解説してもらうこのコラム。
アベノミクス以来長期の上昇トレンドが続いてきた日本株ですが、2018年に入ってから大きな急落が続き、トレンドの転換点にあるのでは?との声もあります。日本株を下支えている日銀の動向が気になるところですが、“異次元緩和”はいつまで続くのでしょうか? そして、春の嵐に荒れる相場で想定される今後のシナリオとは―?

日銀ETF買入~2018年3月は8,300億円超と過去最大に

―― 3月の日経平均株価は何度か急落に見舞われたものの、なんとか20000円台をキープしました。アベノミクスで始まった株高は日銀の買いによって支えられている側面も大きいと思いますが、現在もたくさん買っているのでしょうか?

2016年半ばに日銀は上場投資信託(ETF)の買入枠を年間3.3兆円からほぼ倍の年間6兆円へ増額しました。
これを12ヵ月で割ると「1ヵ月で5,000億円」という買入ペースですが、2018年3月のETF買入額は「1ヵ月で8,333億円」と過去最大に達しました。1月~3月までのETF買入累計額も「1.9兆円」とハイペースに進んでいます。

―― そんなに買っちゃって大丈夫なのでしょうか!? 日銀も、いつかはETFを売って利益を確定しないといけないと思うのですが・・・

足元まで日銀のETF残高は約24兆円(うち含み益5兆円相当)と、東証1部時価総額(18年3月末646兆円)の4%弱を保有する大株主です。
2018年4月に2期目へ入った黒田日銀総裁は、保有するETFの処分時期について、「検討する時点にはない」との考えを示しています。

―― 平成にはいってから長らく続いたデフレから脱却しつつあるようにみえます。そういえば、身のまわりでもいろいろなものが値上がりしました。それでも政府が目標としている物価上昇率2%には到達していないので、まだしばらくは“異次元緩和”が続くようですね。

モノの値段が上がると持っているお金の価値は相対的に目減りしてしまいますから、各々が資産の一部を投資に回しておくことはこれからも重要となるでしょう。

 海外勢の動きは? 4月の買い越しは平均7,600億円相当

―― 日銀が日本株を積極的に買っているとはいっても、日本株の値動きを大きく左右する海外投資家からは買われているんでしょうか?

2001年以降、海外勢は4月に日本株を17年連続で買い越しています。3月期末まで税制上の理由から売りを一時的に膨らませ、配当権利落ちしたのちに新規資金の買いや配当金で再投資する傾向がみられます。

こうした背景も4月の買い越しへつながっているもようです。なお、過去17年間における海外勢による4月の平均買い越し額は「月7,600億円」。これは、前述の日銀のETF買入ペースである月5,000億円を大きく上回ります。

価格帯別累積売買代金に注目! 22500円~23000円前後まで戻りを強める展開も

―― アメリカと中国の貿易摩擦の懸念や緊張が高まっているシリア情勢など、世界経済に影響しそうな不安要素があるなか、売買のタイミングは慎重に見極める必要がありそうですね。

足元では米中貿易摩擦懸念がくすぶり、株式相場の乱高下が続いています。しかし、売り込まれた日本株の予想株価収益率(PER)は12倍台まで低下し、バリュー面からの割安感も台頭しています。

ここで注目していただきたいのが「価格帯別売買代金」です。
価格帯別売買代金は、その価格帯で購入した投資家の分布(バラツキ)が可視化できます。売買代金の多い価格帯(しこり)が下値めどや戻りめどの目安となる一方、売買代金の少ない価格帯(真空地帯)での値動きは早くなる傾向もみられます。

また、3月の日銀短観によると、2018年度の大企業製造業の想定為替レート(※)は1ドル=109円66銭です。
※輸出入をする企業が業績の予想や事業計画を作るときに暫定的に予測して設定する為替レートで、例えば輸出企業なら想定より円安になると為替差益が出て、円高になると為替差損が発生します。輸入企業ならばその逆となります。

輸出企業が多い日本では、一時104円台まで円高に振れたことから輸出をしている国内企業の収益鈍化懸念を警戒する場面もみられましたが、足元のドル円は円安方向へ戻しつつあります。

当面の日本株は、為替が円高に振れても日銀の下支え期待、円安に振れれば海外勢の買いが勢いを増すことも想定されます。2017年9月以降の価格帯別売買代金でのボリュームゾーンとなる22500円~23000円まで、戻りを強める展開もありそうです。

 

価格帯別売買代金(かかくたいべつばいばいだいきん)

価格帯別売買代金とは、その価格帯で購入した投資家の分布(バラツキ)を示す。売買代金の多い価格帯(ボリュームゾーン)が「下値支持線」や「上値抵抗線」の目安となる。一方、売買の少ない価格帯(エアポケット)での値動きは早くなる傾向もみられる。算出期間によってその分布は大きく異なるので、売買のスパンに合わせて調整すると良いでしょう。

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