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「クレヨンで説明できるアイデア」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「クレヨンで説明できるアイデア」

伝説のファンドマネジャーであるピーター・リンチ氏は言っています。
「クレヨンで説明できないアイデアには、決して投資するな」
わかりやすいシナリオで構わないということです。
あるいは、「レッグスやダンキンドーナツなど身近な銘柄を手掛けることの長所は、そこのパンストをはいたり、ダンキンドーナツのコーヒーを飲んだりするたびに、高給取りのウォール街のアナリストが行っているファンダメンタルな調査と同じことをしているということだ」
身近な観察から投資を始めるのは良いことです。4,000近い上場銘柄がありますが、選ぶのは知っている会社でまったく構いません。
自分の知っている業種、好きな業種を現場で定点観測することが意外と役に立つものです。
家電量販店での売れ筋、外食チェーンの人気度、ドラッグストアで売れているもの。株価は人気投票の結果ですから、その前段階の商品やサービスの人気を肌で感じていくことです。それが売上という数字になり、利益という数字になり、株価という数字になるのです。
この原理原則は、未来永劫変わることはありません。
ピーター・リンチ氏は、こうも言っています。
「自分の知らない株を買って幸運にも儲かる人もいるかも知れない。
だがそれはマラソンの選手が、その名声をボブスレーに賭けようと考えるのと同様に、あえて自らハンディキャップを負うようなものである」
ですから、人気のあるところ、人気の源泉、人気の結果を自分で感じていきましょう。
商品やサービスが売れている企業の株価は、それがしっかりと道理にかなっている限り暴落することは滅多にありません。
暑ければ、クーラーやアイスクリームは売れるもの。
面白さが続く限り、遊園地の顧客は減りません。
ダイエットが流行れば、関連銘柄は注目されます。
人は流行に遅れたくないという心理に支配された存在である以上、身近に感じるものは他の人も同じはず。最大公約数の人気を自分で感じることで銘柄は自動的に浮かび上がってくるものです。
重要なのは、消費の主導権を握っている人の心理になること。
できれば、女性の感覚で現場を見ることが大切だと思います。

「まともなこと」

あれこれと騒がしい発言の多いトランプ大統領。今年の夏は、結構マトモなことも話されました。
「SEC(米国証券取引委員会)に対し、企業に決算を四半期ごとでなく半期に一度発表することを許容した場合の影響の調査を指示した」。
背景は企業幹部との話し合いだったそうです。
トランプ大統領の提案では、今は年4回の決算発表が年2回に軽減される案です。
実現は難しいかも知れませんがEUや英国と歩調が合うことになります。
「これにより柔軟性が増加する、資金の節約もできる」というのがトランプ大統領の理由です。
「決算発表を半期に一度とすることは、ビジネス強化に向けた1つの方策となる」という見方もありました。
「インサイダー取引が行なわれるおそれが著しく高まる」
あるいは、「企業が短期的に市場に監査されることを避けたいなら、次の四半期の業績見通し公表をやめることで解決できる」
「半期に一度決算を発表することになれば、投資家にサプライズを与える公算が大きくなる」
「巨大客船クイーン・メリー号をプールの中で方向転換させようとするようなもの」
「金融システム内に巨大な抜け穴を作るには最適の方法だ」
さまざまな見方がありました。
それにしても、金融ビッグバン以来、不動の法則と考えられていた「四半期決算」。
グローバル・スタンダードは不滅でなく、単なるアメリカン・スタンダードだったということが露呈した格好ですから、東京市場が今後どういう反応をしてくるのかは興味深いところです。
ある投資家さんのコメント。「いままで四半期ごとに業績をチェックするのが楽しみだったのに、その楽しみが半減してしまうじゃないですか」
これは至極マトモな声でもありました。

「一期一会」

「能」の世界では、全体でのリハーサルというのは、ほとんどないそうです。
申し合わせという打ち合わせはあるそうですが、通しでのリハーサルは滅多に行われないそうです。
茶道で言う一期一会の世界。
同じ演目の並びもありません。
歌舞伎と違って、同じ演目を連日上演する事はないということです。
舞台は役者さんにとっても「一期一会」。
これが最初で最後の演目になるつもりで演じるといいます。
中には何十年に一回しか上演されない演目もあるともされます。
だから、リハはないというのは、なんとなく納得できること。
すべての演目の訓練・稽古は、常に終わっているということ。
相場も一緒でしょう。
シミュレーションという稽古はできます。
しかし、実戦は一期一会。
一度として同じことが起こる日はありません。
となると、実戦に登場するまでの稽古をどれだけしたのかが試されることになります。
これはストックボイスの実況でも言えること。
同じことは二度とありません。
日々が新しい相場との一期一会。
どんな値動きもどんな展開も実は最初の出会い。
時々デジャブ(既視感)が登場することもありますが、でも行方は過去とは違うもの。
そういう思考法で実は実況に臨んでいるのです。「今日も昨日や先週とはどこか違う」という覚悟みたいなものかも知れません。
もっとも、ビギナーズラックというのもあるから面白いものです。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

 

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